<フランスでは、日本語の本は英語に次いで多く翻訳されている。日本の文化や社会のことがよく表れている小説は、フランス人読者に新鮮な驚きをもたらす>

2月の上旬に1年ぶりにフランスに行った。遊びに行ったわけではない。日本を舞台にした小説『LʼAffaire Midori(みどり事件)』を執筆した私は、今年の「エスカパド文学賞」の選考委員長を務めている。その賞の選考で、日本文学のファンたちに会うための出張だった。

「エスカパド文学賞」はノルマンディー地方で2年に1回開催され、ある国の小説を5作選んでその中の1作に授賞する。芥川賞など多くの文学賞とは違って、選考委員はプロではなく150人の一般読者だ。彼らがそれぞれの小説を読んで投票する。

今回の候補は、宇佐見りん『推し、燃ゆ』、河﨑秋子『颶風(ぐふう)の王』、小川糸『ライオンのおやつ』、東野圭吾『白鳥とコウモリ』、水林章『Suite inoubliable(忘れがたき組曲)』(オリジナルはフランス語、未邦訳)の5作(写真)で、受賞作は5月に決める。全ての選考委員と同じように、私も5作をフランス語で読んだ。

数十人の選考委員と議論をしたが、各作品について「すごかった」「あまり興味がなかった」と意見が分かれるのが興味深かった。「家族内の人間関係が不思議」「上下関係に驚く」といった声もあれば、『推し、燃ゆ』を読んで「日本のアイドルビジネスはおかしい」と指摘する人もいた。『忘れがたき組曲』をめぐっては「戦時中、一部の日本国民が戦争反対の立場だったとは知らなかった」と言う読者が多かった。

コンビニのないフランスだからこそ......