
「毎晩、市民の家を訪ねてリビングに座り込んだ」と、ダガンは振り返る。「誰もが大切にされる街にしなくてはいけない。『私たち対彼ら』という図式の政治を終わりにした」
和解の姿勢は市政にも反映された。「12年間、市議会の決定に一度も拒否権を発しなかった。中間点を見つけ、互いを公に攻撃しないようにした。企業は混乱や不確実性のある地域に来たがらない」
今もダガンは自分で車を運転する。訪問客を乗せて街を案内し、新しいプロジェクトを見せることもある。そんな飾り気のない姿勢は、有権者だけでなく投資家の心もつかんだ。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、デトロイト復活のために2億ドルを拠出。「投資や建設がしやすい環境が整った」と、ダガン市政を評価した。
フォードは10億ドル近くを投じ、廃墟同然だったミシガン・セントラル駅を新たなテクノロジー拠点に再生させた。
GMは22億ドルを投資して、工場を電気自動車専用の「ファクトリー・ゼロ」に転換。ジープやダッジ、クライスラーを傘下に持つステランティスは、16億ドルをかけて30年ぶりとなる新工場を市内に建設し、約5000人を雇用した。
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