真のパワーは、筋力にスピードを乗じた数値である。数値(パワー)が一定の場合、負荷が大きいと筋力が必要になる。そのとき、スピードはあまり出せなくなる。

負荷が小さいと、筋力はあまりいらなくなる。そして、スピードが出せる。先のストロングマンとクンフーマスターの例からわかるように、あるドリルをやる上で必要になる筋力とスピードのバランスが悪いと、パワーを出す動作にはならない。

パンチやキックといったスピードに重点を置いたドリルをやっていても、巨大なバーベルを動かすような負荷に重点を置いたドリルをやっていても、パワーの鍛錬にはならない。筋力とスピードの間にある「中庸」は、体を負荷にしてすばやく動かすときに可能となる。

曲芸師やパルクールの熟達者のように重力に逆らって自在に動くこと──運動におけるパワーの本質はそこにある。

機能的スピードとは、短い距離内で全身をすばやく動かす能力を指す

奇妙に聞こえるかもしれないが、わたしは、「純粋なスピード」には興味がない。「純粋なスピード」とは何か?

伝説的なオリンピックコーチであるアル・マレー監督は、こう語っている。


だれかがスピードについて、あるいは、世界最速のアスリートについて話すのを聞いていると、不正確な表現を用いている場合が多い。

たとえば、数十マイルを記録的なタイムで走る男を「速い」と称するのは、実際には持久力について語っているので誤っている。

短距離を走る、パンチを出す、キックする、跳躍する、回転したりひねったりするといった単一の動作が速いとき。それが、わたしにとっての「スピード」になる。――アル・マレー 『Modern Weight-Training』(1963)

「純粋なスピード」ではなく「機能的スピード」
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