<住居の世話や買い物だけでなく妻の出産の手伝いも、彼らの仕事は選手に一番近い存在であり続けること>

大谷翔平の通訳だった水原一平の違法賭博スキャンダルには、まだ分からないことが多い。だが、1つだけ確かなことがある。それは水原が大谷にとって、ただの通訳にはとどまらない存在だったということだ。

水原はMLB(米大リーグ)のスーパースターである大谷の右腕であり、キャッチボールの相手であり、フィールド内外の問題の調整役だった。通訳と選手の関係をうまく運ぶには、こうして築かれる絶対的な信頼が欠かせない。

水原は昨年夏の米スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」のインタビューで、信頼関係を築くことが「この仕事のとても重要な部分」と語っていた。「私たちは毎日、一緒にいる。妻と過ごす時間より翔平といる時間のほうが長い。個人的な関係は良好でなくてはいけない」

水原と大谷の関係は極端な例かもしれない。しかし、野球界で通訳の役割が大きく進化してきたことは間違いない。

通訳はベンチに入り、ミーティングに参加し、チームのあらゆる活動にアクセスできる。スーパーでの買い物やクリーニングの受け取りといった選手の日常的な用事を任されることも多い(それを考えると、水原が大谷の口座にアクセスできたというシナリオもそれほど突拍子もないものとは思えなくなってくる)。

MLBの通訳は、どうやってこの職に就くのか。そして彼らは日頃、どのような仕事をしているのか。あまり知られていないMLB通訳の日常を見てみよう。

話すことは仕事の10%程度

2016年、全てのMLBチームはスペイン語の通訳を2人以上常駐させることが義務付けられた。スペイン語通訳はチームの職員として、安定した雇用を得る。

しかし、アジア系選手の通訳はいささか違う。彼らもチームに雇われるのだが、雇用の安定は担当する選手の契約次第で大きく変わる。もし選手が契約を失えば、自動的に通訳の仕事もなくなる。

最近は、選手が自ら選んだ通訳をアメリカに連れてくるケースが多くなっている。

大谷は、日本で所属していた北海道日本ハムファイターズの通訳だった水原を選んだ。サンディエゴ・パドレスの金河成(キム・ハソン)内野手は、韓国からペ・レオを通訳として呼び寄せた。ボストン・レッドソックスに昨シーズンから入団した吉田正尚外野手も、日本で在籍したオリックス・バファローズの通訳だった若林慶一郎に依頼した。いずれも以前からよく知っている人物を通訳に選んでいる。

選手本人に当てがない場合は、ほかのアジア系選手に推薦してもらうこともある。パドレスのダルビッシュ有投手の通訳を担当している堀江慎吾は、ニューヨーク・ヤンキースで田中将大投手の通訳を務めていた。

実に少ない「自由時間」
【関連記事】