ニクソン政権期に知られるようになった抑止力としての「狂人理論」が、今回の選挙戦で頻繁に登場するだろう。

バイデンの慎重な国際主義が導く今の世界は戦火にまみれているのに対し、「何をするか分からない」トランプ時代の4年間は大きな戦争が起こらなかった。

2期目の政権で意外な大役を担うかもしれない注目株が、元国防副次官補のエルブリッジ・コルビー。

映画俳優並みのルックスと、ハーバードとエールという名門大学で鍛えられた学歴を持つ彼は、アメリカは中国に最大の関心を払うべきだと考えている。

コルビーが要職に抜擢されれば、中国がより手荒い扱いを受けるというサインだ。

ウクライナ戦争

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ゼレンスキー(写真中央)が率いるウクライナは苦況に追い込まれる UKRIANIAN PRESIDENCYーABACAPRESS.COMーREUTERS

トランプの論理によれば、彼がホワイトハウスを奪還したら、プーチンはウクライナから何でも欲しいものを奪える──プーチンは今、そんなふうに勇気づけられているだろう。

ロシアの反政権活動家アレクセイ・ナワリヌイの死によって、米共和党内には対ロシア政策をめぐり亀裂が生じている。

もちろんトランプは、ナワリヌイの死や彼が実刑に処せられていたことを非難していない。

一方、選挙戦でトランプが優位を保ち、戦場でロシアがウクライナを押し返し続ければ、ヨーロッパ諸国がウクライナへの支援を強化すると、私は予想している。

ヨーロッパのいくつかの国は既に、アメリカが支援に消極的になるのを目の当たりにして、ウクライナ支援に一層本腰を入れ始めている。

トランプが大統領に返り咲く可能性が高まれば、ヨーロッパの危機感はさらに強まる。

ヨーロッパにとっては、ウクライナの隣国モルドバの状況も無視できない。

もしロシアがモルドバ領内で親ロシア派勢力が実効支配する地域──「沿ドニエストル共和国」と自称している──を併合する事態になれば、ヨーロッパはそれこそパニックになるだろう。

1期目の政権でトランプがNATOに冷淡な発言を繰り返したときは、ヨーロッパ諸国が懸念を募らせて、国防支出を増額した。

再びトランプ政権が誕生すれば、ウクライナは苦しい状況に追い込まれ、ヨーロッパは米政権に抵抗するか閉口するかの選択を突き付けられることになる。

トランプの日本への不信感は根深い
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