インフレ圧力がなくならない理由の1つは「合理的無関心」

確かにヨーロッパでは、アメリカよりもエネルギー価格の高騰が消費者物価に及ぼす影響が大きかっただろう。しかしエネルギー価格が下がった今も、サービス価格は下がっていない。ユーロ圏ではこの1年でインフレ率が6%ほど下がったが、この下落にサービス部門が寄与した割合は25%に満たない。

一方、同じ時期にアメリカのサービス価格は5%ほど上がっている。

なぜサービス部門へのインフレ圧力はなくならないのか。1つには、いわゆる「合理的無関心」がありそうだ。低インフレが長く続いていれば、合理的な意思決定者は物価など気にしなくなる。その場合、原油価格が少しくらい動いても、他の産品の価格や賃金水準はほぼ影響を受けない。

しかし22年2月にウクライナ戦争が始まって原油価格が急騰すると、みんな物価に「無関心」ではいられなくなった。そしてインフレを予感した経営者は製品価格を引き上げ、労働者は一段の賃上げを要求するようになった。

本当に大事なのはインフレ目標2%の達成ではなく、誰もがインフレの心配などしないで済む状況を維持すること。真の勝負は「2%」の達成後に始まるのだ。

©Project Syndicate

240305P15P14_NW_Daniel_Gros.jpgダニエル・グロー

DANIEL GROS

ドイツ出身の経済学者。IMFのアドバイザーなどを経て、現在はシンクタンク欧州政策研究センター研究部長。主な研究テーマはEUの経済政策で、欧州議会への助言も行う。
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