世論誘導に利用される

中国共産党はウィーチャットのアカウント停止を武器に、アメリカの選挙にまで影響を及ぼしている。中国の現体制に批判的な中国系アメリカ人の候補者がウィーチャットを選挙活動に使えないよう、共産党がアカウント停止を指示するのだ。

現に22年のミネソタ州議会の下院選に共和党候補として出馬した中国生まれの元米陸軍兵士アレン・シェンは、反中姿勢を打ち出したために選挙戦でウィーチャットを活用できなかった。ニューハンプシャー州の連邦下院選挙の共和党予備選に出馬したリリー・タン・ウィリアムズは中国にいる親族の身の安全のためにウィーチャットでは選挙活動はおろか政治的と見なされかねない投稿も控えている。

トランプ前政権は20年に国家安全保障上のリスクを理由に国内のアプリストアにウィーチャットの提供を禁止した。今のバイデン政権は外国企業が運営するアプリのセキュリティー調査を命じたが、ウィーチャットよりもTikTokの脅威にはるかに神経をとがらせているようだ。ウィーチャット上で中国共産党のプロパガンダが飛び交っていても、中国語で書かれているために米政界や米メディアの関係者には気付かれにくい。中国語のメッセージが英語に翻訳されて、大勢のアメリカ人の目に触れることなどないと思われている節もある。

だが今やウィーチャットはユーザーの生活に不可欠なアプリにとどまらず、中国系アメリカ人、さらには一般のアメリカ人の政治意識に少なからず影響を及ぼすツールにもなっている。バイデン政権は個人情報保護の観点だけでなく、世論誘導の面からもその脅威を慎重に評価すべきだ。

本来ならアメリカで利用されるSNSのアプリは全て、個人情報の保護と言論の自由の両面でアメリカのルールにのっとったものでなければならない。米政府は主要なプラットフォームに法令遵守を徹底する必要がある。

中国政府が国外での通信を監視するのはもってのほかだし、投稿内容の検閲も看過できない。ウィーチャットの親会社テンセントがこうした問題を改善できないなら、このアプリがアメリカで禁止されても文句は言えないはずだ。

人々が自由につながり情報交換するプラットフォームを思想統制や世論操作に利用する。中国のこの横紙破りの暴挙には他の国々と連携して強固な対抗手段を取るしかない。

From Foreign Policy Magazine

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