スピルバーグはユダヤ系ならではの家庭生活を温かく描きながら、フェイブルマン家の崩壊を見届ける。両親の結婚がついに破綻する頃、観客は自由を求めるミッツィにも妻の裏切りに傷ついたバートにも共感している。

やはりと言うべきか、スタッフの職人芸は完璧。ジョン・ウィリアムズの音楽は心を躍らせ、細部にこだわったマーク・ブリッジスの衣装はとびきり美しい。

映画はよくできた成長譚らしく、少年が大きな世界に旅立つところで幕を閉じる。

撮影所で、ある伝説的映画監督(ネタバレするには惜しいので、名前は秘密)と言葉を交わしたサミーは胸を高鳴らせ、表に出て誰もいない屋外セットをひとり歩く。

そして最後の最後で唐突に、スピルバーグはカメラのアングルを変える。この映画的な小さないたずらに、観客はみな同じ疑問を抱くだろう。

さすがは御年76歳のスピルバーグ。どこにカメラを向けたらいいのか分からないサミーと違い、観客に何を見せたいかを完全に心得ている。

©2023 The Slate Group

The Fablemans

フェイブルマンズ

監督/スティーブン・スピルバーグ

主演/ガブリエル・ラベル、ミシェル・ウィリアムズ

日本公開は3月3日

【動画】『フェイブルマンズ』公式トレイラー