<次第に専制主義的傾向を強めたエルドアン政権に対し、若く有能な人々が「国外移住」という形で「ノー」を突き付ける。今年5月に大統領選挙が予定されているが、その結果は?>

トルコ人のデータサイエンティスト、ブルット・フィチジ(25)は、ヘッドハンティングの声が掛かったとき、全く迷わなかった。1年ほど前、オランダの会社に移籍するために、トルコのイスタンブールを離れた。

「トルコは好きだけれど、イスタンブールのような都市にこれ以上住み続けることはできなかった。政治も経済も悪くなる一方だった」と、フィチジは言う。

5月14日に予定されている大統領選と議会選を前に、多くのトルコ国民が国外移住という形でトルコの現体制にノーの審判を突き付けている。

国外移住者たちは、政府への不信、言論の自由に対する弾圧、インフレの進行、ビジネス環境の悪化などを移住の理由として挙げる。

コンラート・アデナウアー財団(ドイツ)が2021年に実施した調査では、トルコの18~25歳の70%以上がほかの国で暮らしたいと考えていて、60%以上がトルコの未来を悲観している。

若者だけではない。最大野党・共和人民党が21年に発表した報告書によると、21年までの3年間に、1万人のミリオネアを含む2万3000人のビジネスパーソンがトルコを出て行った。

20年のデータでは、トルコからの資本流出は440億ドルに達している。12年の40億ドルから10倍以上に増えた計算だ。

03年にエルドアン大統領が首相として権力を握った当初、トルコの未来はもっと明るく見えていた。トルコ経済は好調で、失業率も低下していた。

しかし、エルドアン政権下のトルコは次第に専制主義的傾向を強めていったと、ロンドン・メトロポリタン大学の政治学者アフメト・エルディ・オズテュルクは指摘する。

「国外移住の増加が加速し始めたのは、13年にイスタンブールのゲジ公園で行われた反政府デモが強制的に排除され、16年のクーデターが失敗した後だった。

トルコにダメージを及ぼし始めている