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カタールへの出稼ぎからネパールへ帰国した後に急死した村人の葬儀 AP/AFLO

公的な補償はわずか

ネパールでは、出稼ぎ労働者が死ぬと遺族に約5000ドルの補償が出る。ただし人権団体などによると、これくらいでは渡航に際して生じた借金を返すのがやっとだ。

どこの国も予算は限られている。バングラデシュでは政府が約6000ドルを支給する。インドの場合、出稼ぎ労働者の多いケララ州などには同等の補償制度がある。ネパールの場合は、労働者自身が出国前に約30ドルを払って死亡保険に加入する仕組みだ。

国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルとヒューマン・ライツ・ウォッチは労働組合や支援団体を巻き込んで、#PayUpFIFA(FIFAに払わせろ)のキャンペーンを展開している。FIFAとカタール政府に対し、搾取され障害を負った労働者や遺族への補償として総額4億4000万ドルの拠出を求める運動だ。

カタール政府の公式見解では、W杯関連で死亡した労働者は400~500人。ただし国内の出稼ぎ労働者は200万人(就労人口の約95%)もいるから、決して異常に多くはないという。

しかし支援者に言わせると、出稼ぎ労働者の大半は若くて元気な男たちであり、しかもカタール政府の発表には「死因不明」とされる数千人分が含まれていない。

「医療体制が万全であれば、死因不明は1%未満のはず」だと、アムネスティで出稼ぎ労働者の実態を調査しているエラ・ナイトは言う。「バングラデシュから得た資料によると、カタールでの死亡者の7割には死因の説明がない」

このキャンペーンが掲げる4億4000万ドルという金額は、W杯の賞金総額と一致する。ちなみにFIFAは対話の継続に応じるとしているが、カタール政府は「ただの宣伝」と一笑に付している。

大会が始まってからも、FIFAの設けた練習会場でフィリピン人労働者1人が修理作業中に転落死する事故があった。このときはコメントが出たが、およそ活動家たちの期待に沿うものではなかった。大会組織委員会のナセル・アル・ハテルCEOは言ったものだ。「人が死ぬのは自然なこと。仕事中でも、寝ている間でも同じだ」

#PayUpFIFAに参加する団体「エクィデム」のインド担当ディレクター、ナマラタ・ラジュによれば、支援を集める上で大きな障害になっているのは、カタール政府もFIFAも、世界中のほとんどの国と金銭上のつながりがあることだ。

「これは良心の危機だ」とラジュは言う。「世界的な労働問題だ。どうしてこんなひどい労働市場が今の時代に存在できるのか? どの国も、どの企業も、現代の奴隷制を当たり前のように受け入れるのか? 世界中のサッカーファンが自分自身に問うべき問題だ。こんなふうに成立した大会を見て平気なのか?」

死亡補償金さえ得られない