こうしたシーンでは、カメラのレンズが私たちに向いているように思える。何日も続けてばかばかしい質問に答え、私生活を探られるゴメスは見ていてつらい。

なかにはシリアスな質問をしておきながら、答えをまともに聞こうとさえしない記者もいる。それでもゴメスは一人一人と真摯に向き合い、やっと表に出たところで数百人のファンに取り囲まれる。感涙にむせぶファンの中に、疲労困憊の様子で立ち尽くす。

商品にはなりたくない

この物語では見る側の私たちも出演者だ。SNSの普及で有名人との距離が縮まるにつれて、私たちはより多くを要求するようになった。もっと素顔を見せろ、弱さをさらけ出せ、もっともっと、と。

ある場面でゴメスは「自分が商品に思える」と嘆く。「ディズニーの子役時代に戻ったみたい。ああならないように何年も努力したのに」

『My Mind & Me』はゴメスの素顔と苦悩に迫り、メンタルヘルスのタブー化を払拭することの大切さを説く。だが何より興味深いのは、私たちに内省を促す点だ。

憧れのアーティストに私たちは何を求めるのか。相手が差し出すものだけで満足できないのか。境界線を尊重し、そっとしておくことはできないのか。そんな問いを、ドュメンタリーは投げ掛ける。

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【動画】公式トレイラー『セレーナ・ゴメス:My Mind & Me』