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フィンランド空軍にはアメリカ製のF/A-18戦闘機を供与した JANIS LAIZANSーREUTERS

脅威を誇張することは、脅威を軽視するのと同じくらい危険で、国家を窮地に陥れかねない。かつてドイツの宰相オットー・フォン・ビスマルクは、こう警告した。予防的戦争は「死ぬのを恐れて自殺する」ようなものだと。アメリカの政治家はこの言葉を肝に銘じておくべきだ。

教訓その3は自明の理だ。外国へ攻め込むとき、その国の人たちから歓迎されると期待してはならない。むしろ外国からの侵略は国民を団結させ、激しく効果的なレジスタンスに結実するのが常だ。現にウクライナではそうなった。侵攻軍が戦争犯罪や残虐行為に走れば、歓迎される可能性はさらに下がる。

プーチンはヒトラーと同じ誤りを犯した

教訓その4は、あからさまな侵略行為に対しては各国が黙っていないということ。8年前のクリミア併合に対する西側の反応が鈍かったので、プーチンはウクライナ本土に攻め込んでも大丈夫と踏んだのかもしれない。

そうだとすれば、彼は1939年3月にチェコスロバキアの一部を占領し、続いてポーランドにまで侵攻したアドルフ・ヒトラーと同じ誤りを犯したことになる。超大国との距離感は微妙だ。手間がかかるし、時には他国に責任を転嫁したくもなる。だが露骨な軍事侵略が起きた場合に、適当な距離を保つという選択肢は取りにくい。

ソ連崩壊でアメリカの一極支配が始まったとき、アメリカの冒険主義に対しては軍事的に対抗した国もあれば、ソフトな対応に徹した国もあった。そういうダイナミズムが、アメリカ政府の野望の一部を阻止することに役立った。そのことを、私たちは忘れてはならない。

教訓は以上の4つだ。ウクライナで勝利しても、アメリカが勝手に世界秩序を変えられるわけではない。そんなことは、一極支配の最盛期にも無理だった。

今は中国が台頭し、欧州の経済力は落ち、途上国の多くはアメリカに対して是々非々の態度を守っている。30年前よりも状況はアメリカに不利だ。もしもアメリカの政治家がウクライナでの勝利を、自由主義を世界に売り込むチャンスと見なすようなら、アメリカは再び失敗する運命にある。

そうではなく、アメリカはこの機会に、東西冷戦の時代に始まる自国の世界戦略を慎重に検証してみるべきだ。有効だった政策は何で、失敗した政策は何か。以下、筆者なりに判定してみよう。

粘り強い外交に徹することが成果を生む