ボーダフォンも独自のサポート

衛星とのハイブリッド網としては、ボーダフォン財団も独自に「インスタント・ネットワーク」を運用している。スーツケース大の小型パッケージに発電機と衛星中継機器を内蔵したもので、被災地などに持ち込み次第すぐに稼働できる。

同財団はウクライナ国内ではインスタント・ネットワークを展開していないものの、欧州6ヶ国のボーダフォン社従業員からなるボランティアの緊急対応チームが、隣接するルーマニアとハンガリーの国境に駆けつけた。駅構内や臨時のテントなどに拠点を構え、ウクライナ難民の通信と充電をサポートしている。

インスタント・ネットワークはアフリカで2013年から国連難民高等弁務官事務所の教育事業用として提供されているほか、2016年のフィジーのサイクロン被害でも復興を支援した。

スターリンクは受信機器1万台が稼働中

ウクライナ・デジタル変革省のアレックス・ボルニャコフ副大臣は4月5日、ワシントン・ポスト紙のオンライン番組にリモート出演し、現在ウクライナでは1万台以上のスターリンク受信装置が稼働中であると明かした。

Alex Bornyakov, Ukraine Deputy Minister of Digital Transformation

北部チェルニーヒウや南東部マリウポリなど、激しい破壊を受けた地域を中心に装置が配備されているという。当初は軍と病院に限って利用されていたが、現在では経済活動を支えるため、一部の企業にも配布が進む。

スターリンクは緊急の通信手段として有望視される一方、アンテナと電波がロシア軍の攻撃目標になるとの懸念も指摘されている。ただしボルニャコフ副大臣は、自身が認識する限り、そのような事態は起こっていないとも明言した。

理由については氏は、あくまで推測だと前置きしたうえで、アンテナが小型で視認しにくいことや、ロシア軍内部にスターリンクの存在が周知されていないこと、そして衛星通信の検出に適した装備をロシア軍がもっていない可能性があることなどを挙げている。

ウクライナでは通信技師が地雷原を超えてスターリンク・アンテナの設置に向かうなど、通信の復旧が精力的に試みられている。ベラルーシ国境に近いリューベチでは、町全体が地雷原と化すなか、地元の通信技術者らがスターリンクのアンテナを各所の屋根に設置し、通信環境の回復を進めている。

もはや現代において、通信環境は生活インフラの一部となった。壮大な衛星通信網と地上での復旧活動の両輪により、現地の生活環境の回復が試みられている。