<アメリカの信頼低下で魅力が減る米ドル。統治に課題は残るものの経済規模を増す中国。私たちは今、ドル支配の終わりと人民元時代の始まりを目撃しているのか。「Xデー」は近いのか>

(本誌「人民元研究」特集より)

人民元が基軸通貨になる──昨年11月、アメリカの著名投資家レイ・ダリオが下したそんな「予言」が世界の注目を集めた。

こうした予測を盛り上げようと、中国政府はこれまで独自の努力を繰り広げてきた。今や問題は、その時期だ。中国の野望の実現に必要な決定的転換は今年中に起こるのか。

基軸通貨の座をめぐる競争は美人コンテストのようなもの。問われるのは相対的な魅力だ。

世界各地のトレーダーや投資家は、入手可能な通貨のうち最も使い勝手がよく、最も強固な金融制度に支えられたもの、そしておそらく最も重要なことに、信用度の高い統治主体に裏打ちされたものを選択しなければならない。
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近年ならではの現象は、二大大国である米中の統治主体がどちらも、自国の信用度低下を競い合っているように見受けられることだ。

相対的魅力は定量化が難しい。それでも正確に測定可能な基本要素がある。通貨発行国の経済規模だ。

「世界市場において重要な国の通貨は、その国より小規模な国の通貨より有力な国際通貨候補だ」と、経済学者のポール・クルーグマンは1984年に発表した論文で述べた。

言い換えれば、発行国が世界トップの経済大国であることが、国際基軸通貨にとっての「ハードウエア」だ。

明らかに、中国にはそのハードウエアがある。2013年以降、世界最大の貿易国になり、今や購買力平価(PPP)でアメリカを超えた。近いうちに実勢レートでもアメリカを追い抜く見込みだ。

本稿の筆者の1人であるスブラマニアンは、これらの点を根拠に人民元が米ドルと肩を並べ、いずれはしのぐ日が来ると約10年前に指摘した。

以来、中国は人民元の相対的魅力を飛躍的に高めてきた。中国経済はアメリカのGDPをはるかに上回るスピードで成長を続け、新型コロナ危機からより力強く回復している。

中央銀行の中国人民銀行はデジタル通貨の開発と試験運用を開始した。「一帯一路」経済圏構想に参加する途上国は、拡大する対中貿易や金融取引に人民元を使用し始めている。

とはいえ、ドルの根強い抵抗力も明らかだ。IMF(国際通貨基金)チーフエコノミストのギータ・ゴピナートらによれば今でも貿易決済ではドルが圧倒的に優勢で、国際的な資金提供でもドルの存在感が際立つ。

ドルが人民元に対して強さを持つ大きな理由は、米経済のハードウエアが強力な「ソフトウエア」に補完されている点にある。

アメリカには投資家の信頼感を下支えする各種のクオリティー、なかでも信用できる統治主体に裏付けられた強固な金融制度が存在する。これは中国にとって多くの課題が残る領域だ。

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