こうした訴追については深刻な論議を呼ぶ可能性があり、司法省は、仮に刑事訴追に値する不正行為があるとしても、トランプ氏を訴追することが公益に反すると判断する可能性もある。

バイデン氏はこの疑惑について非常に慎重に対応しており、新政権下では司法省の判断に干渉しないと述べている。

前任者に対する刑事訴追について、バイデン氏は8月、ナショナル・パブリック・ラジオに「きわめて異常な事態であり、恐らく、何と言うべきか、民主主義にとって非常に良いことではないだろう」と語っている。

トランプ氏の弁護士にコメントを求めたが回答は得られなかった。

ニューヨーク州による民事詐欺訴訟

民主党員であるニューヨーク州のレティシア・ジェームズ州司法長官は、トランプ氏とその一族が経営するトランプ・オーガナイゼーションに対する脱税捜査を進めている。

この捜査は、トランプ氏の弁護士だったコーエン氏が連邦議会に証言した内容がきっかけだ。コーエン氏は、トランプ氏が債務・保険のコストを抑制するために資産価値を吊り上げた後、不動産税を抑えるためにまた低く抑えたと述べた。トランプ・オーガナイゼーション側は、この事件は政治的な動機に基づいたものだと主張している。

この捜査は民事であり、罰金に繋がる可能性はあるが、収監されることはない。

ジェームズ長官はこれに関し1つないし複数の取引にトランプ氏の息子でトランプ・オーガナイゼーションの執行副社長を務めるエリック・トランプ氏同氏が密接に関与していたとみており、10月に事情聴取を行った。

E・ジーン・キャロル氏による訴訟

雑誌「エル」の元記者であるE・ジーン・キャロル氏は、2019年にトランプ氏を名誉毀損で告訴している。1990年代にニューヨークの百貨店内でトランプ氏から性的暴行を受けたとするキャロル氏の主張をトランプ氏が否定し、著書の販売促進のために嘘をついていると非難したためだ。

8月、州裁判官は裁判の継続を認めた。これによってキャロル氏の弁護士は、現場の百貨店で彼女が着ていたとされる衣類と照合するため、トランプ氏のDNAサンプルを要求できることになる。

米司法省はこの事件の被告をトランプ氏ではなく連邦政府にしようと努力したが、マンハッタン連邦地方裁判所の連邦裁判官は、この措置を却下した。マンハッタン連邦地裁のルイス・カプラン判事は、キャロル氏に関するトランプ氏の発言は、大統領としての職務の範囲で行われたものではないと述べている。

しかし、バイデン政権下の司法省はトランプ氏をこの事件から切り離そうとする努力を放棄するだろう、とミシガン大学のバーバラ・マッケイド教授(法学)は予想する。

「根拠のない主張だと思われ、新政権下で司法省がそれを続けるとは考えにくい」と元連邦検察官の同教授は言う。

サマー・ザーボス氏による訴訟

またトランプ氏は、サマー・ザーボス氏による訴訟も抱えている。2005年、トランプ氏が司会を務めるテレビのリアリティーショー番組「アプレンティス」に出演した人物だ。トランプ氏は、2007年に会った際に彼女にキスを強要しし、ホテルでわいせつな行為を仕掛けたという。

トランプ氏がザーボス氏を嘘つき呼ばわりしたため、彼女はトランプ氏を名誉毀損で告訴した。

トランプ氏は、自分は大統領なのでこの訴訟からは守られていると述べている。

この訴訟は保留となっている。ニューヨーク州の控訴裁判所は、「トランプ氏は在任中も訴訟に応じなければならない」とした2019年3月の決定を見直している。大統領の座を降りれば、トランプ氏の言い分ももはや通用しない。

(Makini Brice記者、Jan Wolfe記者、翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]
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