「臭い」なかでの心地よさ

次は全く系統が違うのですが、内田樹さんの『寝ながら学べる構造主義』。哲学書っていうのかな。寝ながら学べるっていうくらいなので非常に分かりやすい構造主義の入門書です。僕は哲学や思想にすごく詳しいわけではないですが、そこと文学は切り離せない。やはり構造主義を理解しておくと、いろんな物や人のことを理解できると思った。


『寝ながら学べる構造主義』

 内田樹[著]

 文藝春秋

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

小説を読む理由も結局、他者を理解することだと思うんです。それで最終的には優しさとか思いやりとか、言葉にすると照れるようなことかもしれないが、そういうものを得られる。構造主義を知るのもまさにそういうことかな、とこの本を読んで感じた。

構造主義がどこから来ていて、何が自分と他者の違いを生んでいるのかを文化人類学的な視点などから分かりやすく書いている。自分たちが当たり前と思っている思考方法が、構造主義という近年の考え方だということも、僕には目からうろこだった。そこからまた別の思想や哲学にも広がっていくので、入り口としてこの本を読めてよかった。

4冊目は川上未映子さんの『ヘヴン』。川上さんは独特な文体で、女性的な目線が強い作家だと思うのですが、『ヘヴン』ではそのあたりは封印している。斜視の中学生のいじめの話で、いじめる者といじめられる者がいる。ちょっと構造主義的なところもあり、ニーチェっぽかったりもする。


『ヘヴン』

 川上未映子[著]

 講談社

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

読んだときはまあまあ面白いと思ったけど、すごく評価されていることには付いていけなかった。でも結果的に、読み直すことが非常に多い。結局、好きなんですよ。でもその好きとか、良さがうまく言葉にできない。

子供たちを描いているので文体は分かりやすいのですが、内側では不条理なものだったり、善と悪が混然とするような奇妙さがうごめいている。読者としては楽しんで読むけど、「そんな自分はどうなんだろう」とも考えてしまう。

時間がたてばたつほど好きになっていく。そういう本はいくつかあるが、小説を書いていて、「あれ、なんだっけな」と手に取る確率が高いのは『ヘヴン』。読んだ当時はそうでもなかったが、今になって人に薦めるし、定期的にページを開く本なんですよね。

今回選んだ本はどれも、何度か読み直す本。それは自分が本当に好きなものなんだろうな、と思うからです。

【関連記事】太田光を変えた5冊──藤村、太宰からヴォネガットまで「笑い」の原点に哲学あり

読み終わった後ですぐ読み返し、ずっと心に残っている1冊