■円売りではなくドル高との見方も

また、今回の円安に関して言えば、円売りというよりむしろドル買いが進んだことによる「ドル高」だという見方も根強くあります。米ドル指数は、2月20日に99.815という2017年4月以来の高値をつけたからです。

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ドル指数は複数の主要通貨に対する米ドルの為替レートを指数化したもので、対ユーロが6割を占めているため、最近のユーロ安によって大きく押し上げられていました。中国との関係が深いヨーロッパ経済への懸念が高まっていたことが要因です。

しかしその後、新型コロナウイルスによる感染拡大が中国や日本・韓国などのアジアからイタリアやイランなどに広がったことから、アメリカ株式市場は大幅に下落。米国10年債利回りも1.3%と過去最低を更新すると、一転、ドル売りによる円高が進むこととなりました。

まだ「日本売り」とは言えない?

今回の円安はたしかにインパクトが強かったものの、これだけで「日本売りが始まった」と言うことはできないでしょう。近年、海外勢はリスクオンの状況下でも円売りを行わず、むしろ積極的に投機的な円買いを行い、円のロングポジションを取るようになっていたからです。

それが日本企業や個人投資家による多額の対外投資による円売りとぶつかり、結果として、ドル円相場は歴史的なレンジ相場となっていました。2018円のドル円相場の値幅は9.99円と過去46年で最小でしたが、2019年はさらに縮小して7.94円となり、2年続けて値幅が10円を下回っていたのです。

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このような狭いレンジが永遠に続くことはありません。海外投資家によるキャリートレードが活発に行われなくなったとしても、世界経済が深刻なリセッション(景気後退)に陥り、日本の企業や投資家が海外資産を売却して国内に資金を戻すときに、大幅な円高が進むリスクもあります。

その一方で、2019年10~12月期に続いて2020年1~3月期の実質GDPもマイナスになれば、日本が世界に先駆けてリセッションに陥る懸念が高まります。海外の投資家が円資産を引き上げる動きを強めれば、為替市場は円安に進む可能性もあるでしょう。

2020年1~3月期GDPの発表は5月18日です。テクニカル的には2017~2018年にかけて何度も上抜けに失敗した114台半ばが焦点となりそうですが、115円台まで円安ドル高が進むようなことがあれば、そのときには「日本売り」という判断が高まる可能性も出てくるかもしれません。

新型コロナウイルスがどこまで広がるか、それが経済にどれほどの影響を与えるか、まだまだ見通せない部分が多くあります。このような段階で性急な判断を下すのではなく、冷静に、しかし警戒は怠らずに、日々の状況を注視できるだけの心とポジションの余裕を持っておきたいものです。

(Chart by TradingView

(参考記事)「トヨタを買っておけば大丈夫」ってほんと? 銘柄選びの常識・非常識

2020/03/02

[執筆者]

山下耕太郎(やました・こうたろう)

一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011  先物オプション奮闘日誌

※当記事は「株の窓口」の提供記事です
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