<熟練の職人たちが長い時間と情熱を捧げることで、スタインウェイは世界最高峰のピアノであり続ける。その製作現場を訪ねた>

世界最高峰ブランドとして名高い「スタインウェイ&サンズ」(Steinway & Sons Inc.)のグランドピアノ。ニューヨーク市にある本社工場では長年腕を磨いてきた匠(たくみ)が1万2000に及ぶ部品の加工、組み立てを一つ一つ手作業でこなす。木材を削ったり、やすりを掛けたり、真剣な顔つきで黙々と作業をこなすも、完成までは約1年かかるという。1台1000万円から、最上級品は5000万円を超す名器の製作現場を訪ねた。

スタインウェイ氏が創業

スタインウェイのピアノは、ピアニストの間で知らない人はまずいないほど有名だ。コンサートピアニストの20人中19人が同社製のグランドピアノを選ぶ(同社調べ)とされ、「スタインウェイは私の知るピアノの中で最も万能な楽器です」(内田光子氏)、「コンサートでスタインウェイのピアノを弾くチャンスに恵まれ、大変嬉しく思っています。 スタインウェイのピアノは、すべてにおいて完璧です」(セルゲイ・ラフマニノフ氏)と高名なピアニストからも愛されている。

スタインウェイ&サンズは1853年創業、ドイツから移住したヘンリー・E・スタインウェイ氏がマンハッタン区のロフトを最初の作業場として、ピアノづくりに勤しんだ。1870年代に今の本社があるクイーンズ区に移り、一帯は企業城下町として栄えた。本社周辺から駅まで延びる約4キロの道はその名も「スタインウェイ通り」と呼ばれ、近くの駅にも「スタインウェイ」の名が冠されている。

職人たちが黙々と

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クイーンズ区アストリアにある本社のエントランス

白が基調の瀟洒なエントランスを入ってすぐに受付がある。そこから社員の案内に従い、建物内の廊下をいくらか進むと、大型のガレージのようなシャッターが立ちはだかる。

それまでの静かで小ぎれいな社内の雰囲気とは一転、先には職人たちによる作業の音や機械音がこだまし、別世界が広がる。やすりや万力、糸のこぎりのような電動工作機など数多くの道具が備わり、さながら学校の図工室か技術室のようだ。

木の削りかすや粉塵が飛散する中、みなゴーグルを着用しての立ち仕事。ほとんどが男性だ。ある人は木材を黒く塗り、ある人は鉛筆で慎重に線を引いていた。5階建ての各フロアで、職人がそれぞれの仕事に黙々と取り組む姿が印象的だった。

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作業場はまるで中学校の技術室
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何やら緻密な計算をしつつ鉛筆で線を引く
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弦の振動を伸びやかな響きに変える役割を果たす「響板」。職人が専用のはけで色を塗る
特有の音色を生む重要部位