Patricia Zengerle
[ワシントン 4日 ロイター] - 米中間選挙で野党民主党が上院と下院の過半数を確保し、与党共和党が2年間握っていた政治権力の重要な一角を奪還した。選挙戦を通じて民主党が批判してきたのは、共和党が議会に与えられた憲法上の戦争遂行権限や財政支出権限をトランプ大統領に事実上明け渡してきたという点だ。民主党が議会を掌握すれば、トランプ氏の権限行使に一定の歯止めをかけるとみられている。
来年1月からの民主党主導の新議会が、外交政策面でトランプ政権をどのように抑制し得るかをまとめた。
◎イランとの戦争に「待った」
トランプ氏は2月28日にイスラエルとともにイランへの軍事作戦を開始した際、議会の承認を得なかった。民主党は、議会の正式な承認なしに戦闘を継続すべきではないとして、これまで繰り返し終戦を求める決議を可決してきた。
こうした決議の1つは上下両院を通過し、一部共和党議員も賛成したが、トランプ政権は従わなかった。
今後、民主党は議会での影響力を利用し、国防予算の削減や人事承認手続きの遅延を通じて、トランプ氏に戦争継続のための議会承認取得を迫ることができる。また公聴会の開催などを通じて、政権に戦略や計画を議会や国民へ説明させることも可能になる。
◎ウクライナ支援再開
トランプ氏は、ロシアの侵攻に対抗するウクライナへの直接的な軍事・財政支援をほぼ停止している。しかしこの支援には民主・共和両党の議員から幅広い支持がある。
最近ではトランプ氏がロシア産軽油に対する制裁を解除し、自ら署名して成立させた対ロシアエネルギー制裁法の適用除外措置を認めたことで、多くの共和党議員を含む議会関係者の反発を招いている。
来年1月から上下両院を支配する民主党は、どの法案を採決にかけるかを決定できる。そのためウクライナ向け追加支援を可決し、たとえトランプ氏が拒否権を発動しても、それを覆すために必要な3分の2以上の賛成を集められる可能性がある。民主党関係者はウクライナ支援を最優先課題の1つと位置付けている。
また民主党は他の政策分野でも対抗措置を講じる構えだ。例えばニューヨーク州選出で下院外交委員長に就任する見通しのグレゴリー・ミークス議員は、ロシア産軽油を再び国際市場に戻そうとするトランプ氏の計画を阻止する超党派法案を提出している。
民主党の議席数が最終的にどの程度になるかは未確定だが、ウクライナ支援はこれまで民主党だけでなく多くの共和党議員からも支持されており、議会が大統領拒否権を覆せるだけの賛成票を確保してもおかしくない。
◎イスラエル向け軍事支援停止も
イスラエルのパレスチナ自治区ガザにおける対応を受け、民主党支持層の間でイスラエルへの支持は大きく低下した。戦闘では数万人のパレスチナ民間人が死亡したとされる。イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区で続く暴力や、ネタニヤフ首相と共和党との緊密な関係も、支持低下の背景にある。
民主党はイスラエルに対する軍事支援を削減、あるいは停止する可能性がある。米国は現在、年間38億ドルの基本支援を実施しているほか、2023年10月7日のハマスによる攻撃以降、さらに数十億ドル規模の追加支援を提供してきた。
今年夏には下院民主党議員のほぼ半数がイスラエル支援停止案に賛成票を投じた。反対票を投じたミークス議員のような中道派議員の中にも、大型爆弾など特定兵器の供与制限を支持する声がある。
◎軍事費抑制と対外援助復活
民主党は共和党に比べ、軍事支出の拡大に慎重な立場を取る傾向がはるかに強い。トランプ氏は今年、前例のない67%増となる1兆5000億ドルの国防予算を要求したが、民主党はイランとの戦争を巡り議会との協議を拒んだことや、社会保障関連予算を大幅に削減したことを理由に、上院でこれを阻止した。
トランプ政権が議会によって承認されていた数十億ドル規模の対外援助を凍結または打ち切ってきたことにも民主党は強く反発しており、資金拠出の復活を目指している。
◎中南米政策への監視強化
トランプ氏は西半球において、近年の歴代大統領よりも積極的な介入政策を進めてきた。ベネズエラでは軍事力による政権転覆を実施したほか、同国沿岸で1年以上にわたり船舶への攻撃を続けている。さらにキューバの共産党政権に打撃を与えることを狙った制裁を科し、政権交代を迫るため軍事行動の可能性も示唆してきた。またホンジュラス、アルゼンチン、コロンビア、ブラジルの選挙への影響力行使を試みてきたとされる。
民主党内にはベネズエラ政策を巡る調査や公聴会の開催を求める声がある。キューバに対する制裁についても、一般市民を苦しめる「非人道的な措置」だとして批判し、外国選挙への介入を終わらせるべきだとの主張が出ている。