Heather Schlitz

[デトロイト 22日 ロイター] - パスタや乾燥豆、缶詰、粉ミルクが丁寧に詰められた段ボール箱を前に、トーニャ・キングさん(65)は涙を流した。

米中西部ミシガン州デトロイト在住のキングさんは「ずっと待っていた」と声を詰まらせた。「ようやく娘から電話があり、『彼が来る』と言われた」。

「彼」とは、非営利の食料支援プログラム「フォーカス・ホープ」のディレクター、フランク・クビク氏。6人家族が2週間をしのげる量の食品を届けに来たのだ。同団体は主に、年金などの限られた固定収入で暮らす低所得高齢者を支援している。ガソリン価格の高騰により、配布拠点まで物資を取りに行けなくなった高齢者も多く、食料品の価格上昇も相まって、これまで以上の支援を必要としている。

米国各地で食料支援の需要が高まる中、フードバンク側の配送コストもかさんでいる。米国とイランの戦争を背景にディーゼル(軽油)価格が高騰している一方で、インフレ、連邦政府による食料支援の削減により、生活苦にあえぐ国民からの需要は増えている。

11月3日の中間選挙で行われるミシガン州の上院選は、民主党が上院の多数派を奪還できるかを左右し得る重要な激戦地の一つになるとみられている。生活費高騰は有権者にとって大きな争点だ。ロイター/イプソスによる最新の世論調査では、全国の登録有権者のほぼ半数が、中間選挙での投票先を決める最大の要因として「生活費」を挙げている。

キングさんは、疫学者でデトロイト市の保健局長を務めた経歴がある民主党候補、アブドゥル・エルサイード氏に投票するつもりだという。エルサイード氏が選挙運動の中心に掲げる「生活費の高騰」と「医療制度」という2つの課題に取り組んでほしいと、キングさんは期待感を示した。対する共和党候補のマイク・ロジャース氏は生活費負担の軽減策として、州および連邦のガソリン税停止や減税の導入を訴えている。

「てんかん発作の薬と糖尿病の薬のどちらを買うか、選ばなくてはならない」とキングさんは言う。「この状況を変えてくれる誰かが必要だ」

キングさんにとって食料は、手の届かない数多くの生活必需品の、ほんの一部にすぎない。ガソリン高によって、政府の生活支援から得られるわずかな収入はさらに圧迫されている。暖房設備は故障し、冬が迫る中、家族には修理する余裕がない。室内には尿のにおいが漂う。水道は1カ月以上止まっており、脳性まひでうまく体を動かせないキングさんは差し込み式の便器を使っている。床板には地下室が見えるほどの大きな穴が空き、窓枠からはピンク色の断熱材がむき出しになったままだ。傾いた玄関ポーチの修理も、後回しにせざるを得ない。

「涙をこらえるのがやっとだった」。クビク氏はキングさんのもとに支援物資を届けた後、車に戻りながらこう語った。

<全米で高まる圧力>

ガソリン高で配布拠点へ足を運びにくくなった低所得高齢者が増えたことを受け、「フォーカス・ホープ」は年初には月800箱だった食料支援箱の配布数を、現在は月1300箱に増やしている。

全米各地の食料配給団体が、同様の厳しい負担に直面している。

カリフォルニア州の「セントラル・カリフォルニア・フードバンク」では、7ー9月のディーゼル燃料費への支出が前年同期比で61%増加した。共同最高経営責任者のキム・ディルディン氏は、「地域に提供できたはずの約25万食分が、燃料費に回っている計算になる」と話す。同団体はこの地域最大の飢餓救済団体として、毎月30万人以上に食事を提供する慈善団体へと食料を供給している。

「寄付をしてくれる方々もガソリン代の高騰に苦しんでいる。フードバンクを支える25ー250ドルの寄付をしてくれる人々こそ、燃料価格高騰のあおりを最も受けている」とディルディン氏は言う。さらには、これまで寄付する食品の輸送費を負担していた一部の小売業者が、現在はコストの分担のほか、フードバンク側の負担を求めるようになっているという。

イリノイ州シカゴ最大級のフードバンクの一つ「グレーター・シカゴ・フード・デポジトリ」の広報担当者は、組織の予算を圧迫している燃料費の高騰を補うため、卵など比較的安価な食品の提供を増やしていると述べた。

政府が低所得世帯向けの給付を削減したことも、フードバンクや飢えに苦しむ人々への新たな打撃をもたらしている。トランプ米大統領の看板政策である税制・歳出法が昨年施行されて以降、全米で470万人以上が、低所得者向け食料購入補助「フードスタンプ」(SNAP)の給付を失った。

デトロイト在住のジョナ・ベリーさん(84)も「フォーカス・ホープ」から食料品ボックスを受け取っている。食料品が値上がりする中、限られた収入で暮らしをつなぐ助けになっていると話した。

「何とかやりくりしている」とベリーさんは言う。「限られた物資を長持ちさせる方法は、分かっている」

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