Lewis Krauskopf
[ニューヨーク 22日 ロイター] - 11月3日の米中間選挙が迫る中で、データセンター建設に対する世論の反発が、株価をけん引してきた人工知能(AI)投資の重しとなる可能性がある。野党民主党が議席を大きく伸ばした場合、データセンター建設への監視や規制圧力が強まり、AI投資の拡大ペースが鈍る可能性があるとの見方が市場関係者の間で出ているためだ。
米国株式市場はグーグルの親会社アルファベットや、アマゾン・ドット・コムなど巨大テクノロジー企業によるデータセンターへの巨額投資を背景に、4年にわたる強気相場を維持してきた。市場では、データセンターを含むAIインフラ投資が来年には1兆ドル(約156兆8400億円)を超えると見込まれており、企業業績の拡大期待を支える重要な要因となっている。
そのため、投資家はAI開発やインフラ整備の勢いを弱めかねない要因に非常に敏感だ。実際、クラウド企業コアウィーブを巡る債務問題への懸念から、ここ数週間でAI関連銘柄の一部が下落する場面も見られた。
そこに新たな懸念要素として、データセンターの急増に対する住民の反発が浮上してきた。大量の電力消費による環境負荷や電気料金への影響に加え、AI技術そのものに対する不安も背景にある。
ウィズダムツリーの米国最高投資責任者(CIO)を務めるクリストファー・ガナッティ氏は「これは非常に現実的な問題になっている」と指摘する。同氏は、2022年11月の対話型AI「チャットGPT」登場以降、市場では「5社ないし6社の巨大企業がデータセンターにどれだけ資金を投じているか」が重要なシグナルになってきたと述べた。
市場関係者によると、中間選挙で民主党が上院、下院の両院を制し、トランプ大統領が率いる共和党から議会支配権を奪還した場合、AI関連にとって最も大きなリスクシナリオとなる可能性がある。そして予測市場のカルシやポリマーケットでは、民主党が上下両院を制する「民主党スイープ(全面勝利)」が最も有力視されている。
ただ、アナリストの多くは、データセンター建設を大幅に抑制するような連邦法が成立する展開には懐疑的だ。たとえ民主党が議会を掌握した場合でも、AIやデータセンター建設そのものを大きく妨げる法案が実現する公算は乏しいと予想する。
BCAリサーチの地政学ストラテジスト、マット・ガートケン氏は「トランプ氏が署名してAI規制法案が成立するとしても、設備投資や建設計画に急ブレーキをかける内容にはならないだろう」とし、AI推進に前向きなトランプ氏は投資などを抑える法案には拒否権を発動するとの見方を示した。
一方でトランプ氏は21日、データセンターを建設する企業は、地域住民の理解を得るために地域へ「配当」を支払うべきだとの考えを表明した。
民主党内にも、データセンター投資が経済成長や中国との競争力維持に不可欠との認識があり、建設を大きく阻害するような措置には慎重な議員が少なくない。
それでも、民主党が議会を支配すれば、AIやデータセンターを巡る公聴会や調査が増えると予想されている。スタイフェルのチーフ米国政策ストラテジスト、ブライアン・ガードナー氏は「議会公聴会や調査が行われるだろう。そこから何が出てくるか分からず、ネガティブな見出しが増えてもおかしくない」と話した。
<州・自治体の選挙も注目>
投資家が注目しているのは連邦レベルの政治だけではない。データセンター建設では州政府や地方自治体が大きな権限を持つため、州知事選や州議会選挙の勢力図がどのような結果になるかも重要視されている。モルガン・スタンレーのストラテジストチームはテキサス、オハイオ、ペンシルベニア、ジョージア、ネバダ、ウィスコンシン、ミシガンの各州知事選を重点的に分析している。
ワシントンのシンクタンク、ビーコン・ポリシー・アドバイザーズのマクスウェル・シュルマン氏は「データセンターは州や地方選挙において非常に重要な争点になっている。どちらの党が主導権を握るかによって、今後データセンターが直面する規制や制約に大きな影響が出る可能性がある」と語った。
またシュルマン氏は「データセンター投資が一部の州に集中しているため、投資家はこれらの州の政治動向を特に重視する必要がある」と述べた。
BNYウェルスのシニア株式アナリスト、ケビン・シェイ氏は、データセンターを巡る政策の不透明感について「AI投資という大きなテーマそのものが台無しになることはないだろう」としながらも、「投資計画のタイミングやコストには影響を与えかねない」と警戒感を示した。