<世の中にはカネと利権が絡むだけで悪いことと思っている人が多いが……>
簗(やな)和生農水相辞任の一幕は、勧善懲悪の歌舞伎のようだ。
近年でも加計・森友学園、自民党議員の「裏金」問題、旧統一教会問題など、全部が違法というわけではないが、政権にダメージを与える狙いで一部のマスコミが報じ(内部からの通報を基にすることが多いようだ)、それが反響を呼ぶとマスコミはこぞって「悪者」をたたき始める。世の中には、カネとか利権が絡むだけで悪いこと、と思っている人が多く、たたかないと読者・視聴者からの抗議が殺到するからだ。そこでは法的な議論より、道徳論が幅を利かす。
しかし古今東西、カネ・利権と政治とは切っても切り離せない。それどころか、カネと利権の配分、奪い合いこそが政治なのだ。「国会議員は安全保障とか社会保障とか国全体に関わる高邁な政策を作るのに専念しろ」と言う人もいるが、それは建前論。衆参両院713人もの国会議員が四六時中、「高邁な政策」策定に専念したら、法案はいつまでたっても成立しないだろう。
世界の歴史は、カネ・利権の歴史でもある。そこでは宗教も俗な顔を見せる。中世の延暦寺は、日本海の港から京都への物流の利権を周辺の寺社と争ったし、中世の欧州ではキリスト教会の土地・利権(税収など)を国王が奪う事例が続発。1534年にローマ教会と対立したイングランドのヘンリー8世は、教会の資産を没収した上、競売に出すという荒療治で窮迫した王室財政を立て直した。
神聖ローマ帝国(ドイツ)では、当時の豪商フッガー家がローマ教皇と癒着して、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂新築の費用を調達。免罪符なる高額のお札を売り出したのをきっかけに、ルターの教会批判が起き、皇帝とローマ教会に反発していた有力諸侯たちの支持を得て新教(プロテスタント)が立ち上がった。