②現地統合

2つ目は、難民が避難先で受け入れられ、その国に住み続けるという「現地統合」である。実は、難民の7割弱は近隣諸国に逃れており、主要な受け入れ国は開発途上国に集中している。経済基盤が脆弱で自国民すら生活が苦しい国々にとって、難民の受け入れは経済的・社会的リソースの流出を意味するため、当然ながら「現地統合」は思うように進まない。

③第三国定住

3つ目は、本国へ帰還することが難しく、かつ避難先でも十分な保護が得られない場合に第三国が難民を受け入れるという「第三国定住」である。

これは、開発途上国の負担を軽減するために、先進諸国が難民に再定住の機会を提供するという枠組みでもある。しかし、近年の米国に象徴されるように、先進諸国は「メリットが薄い」と判断すれば、難民の受け入れを制限する。結果として、先進諸国のコミットメントは極めて消極的なのが現状である。

かくして本書は、長年維持されてきた3つの解決策がすでに「画餅」に帰し、処方箋としての実効性を喪失している実態を浮き彫りにする。

人道から開発へのパラダイムシフト

そこで、近年、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を中心に試みられているのが、人道から開発へのアプローチ転換である。

従来の難民支援は、緊急時の短期的な食糧や物資の配給といった人道支援が中核を占めていた。しかし、避難生活が長期化するにつれて、従来型の人道支援の役割は限定的となり、先進諸国の「支援疲れ」による援助減少も深刻化したのである。

このアプローチは決して新しいものではない。遡ること1980年代から人道と開発のギャップを埋めようとする試みが、たびたび行われてきた。

しかし、受け入れ国政府の支持や理解が得られず、難民の労働市場への参加が大幅に制限されたり、受け入れ国の経済自体が脆弱なために雇用機会が決定的に欠如していたり、先進諸国からの援助が不足するなどの障壁によって、いずれも成功を収めることはなかった。

変化が訪れたのは2015年である。いわゆる「欧州難民危機」を契機に、開発主導アプローチに重点を置こうとする動きが加速した。2016年の「世界人道サミット」では、人道支援の枠組みに開発の視点を取り入れることが重点課題として合意された。

この流れを引き継ぐ形で、国連総会では2016年に難民の保護を促進するための「ニューヨーク宣言」を採択し、その国際的な指針として2018年に「難民に関するグローバル・コンパクト」を採択した。

しかし本書は、これらはあくまで「決意表明」の域を出ないと指摘する。過去の失敗の歴史が示す通り、重要なことは、合意された原則や理念をいかに現場で実行可能な機能的メカニズムに落とし込めるか、という具現化の成否である。