Noriyuki Hirata
[東京 7日 ロイター] - 日本株が年末高に向けて勢いを維持できるかどうかを見極める上で、11月3日投開票の米中間選挙の結果が注目されている。予測市場では民主党の下院奪還が有力視されているが、過去の経験則(アノマリー)では「ねじれ議会下での株高」が日米ともに高い確率で起こっている。ただ、民主党が勢力を拡大し人工知能(AI)データセンター建設の規制強化の波が広がるようだと相場の腰折れにもつながりかねないだけに楽観はできない。
<選挙後3カ月、日本株3%高>
三井住友DSアセットマネジメントが1982年以降の過去11回の米中間選挙を検証したところ、S&P500種株価指数は、選挙前の3カ月間に平均3.8%、選挙後の3カ月間に平均5.9%上昇した。選挙後上昇の確率は81.8%に上る。同社の市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「政局の不透明感は選挙の約1カ月前から市場で消化され始め、選挙後にあく抜けし、一段高になる傾向がある」とみている。
日本株はどうか。市川氏は、株価動向のばらつきは米株より大きく「日本固有の要因の影響も受けるため、米国株ほどきれいな形にはならない」と指摘。それでも、82年以降の11回で日経平均株価は、選挙前の3カ月間に平均で約3%下落し、選挙後の3カ月間に約3.3%上昇した。選挙の約1カ月前から株価は上昇し始め、選挙後に一段高になる流れは米国株と同じという。
もっとも、足元の相場は、平均的な選挙年とは様相が異なる。8月3日から今月6日までの上昇率は約10%と、過去11回の同期間平均の約マイナス4%を大きく上振れている。成長期待のある半導体株が相場をけん引していることに加え、国内のインフレ環境も異なることが影響していそうだと市川氏はみている。
<強まるねじれ観測>
今回の米中間選挙では、トランプ大統領の共和党が議会で主導権を失うシナリオが意識されている。予測市場ポリマーケットでは6日時点で、民主党が下院を奪還する確率は93%、上院を奪還する確率は65%に達する。JPモルガンの集計では、1934年以降の中間選挙で、現職大統領の与党は平均して下院で約27議席、上院で約3議席を失ってきた。現在の議席数は、下院で共和219(うち無所属1)、民主214、欠員2、上院で共和53、民主47(うち無所属2)となっている。
大統領が共和党、上下両院が民主党となる完全なねじれの場合、法律の制定や予算関連法案の成立には野党の協力が必要となり、内政上の政策が停滞しやすくなる。下院のみ民主党が多数となる部分的ねじれでも、法案は両院での可決が必要なため、立法面での制約は大きい。一方、閣僚や連邦判事などの主要人事には上院の承認が必要なため、上院の多数を維持できれば、大統領は人事を通じて政策を進める余地を保てるとされる。
<ねじれは株価にプラスの経験則も>
過去には「ねじれ」が株価にプラスだった様子もうかがえる。ねじれは「主に政策面でのダウンサイドリスクを限定的にする要因として、市場にプラスに働く」とJPモルガンの西原里江チーフ株式ストラテジストは分析する。JPモルガンによる1950年以降の集計では、新議会の発足から任期2年間でみるとS&P500のリターンは、上下両院で多数派が異なるねじれ議会下でプラス25%となり、単一政党が両院を支配する場合のプラス18%を上回る。
ねじれによって、急進的な法案が通りにくくなり、政策変更に伴う不確実性が抑えられるためとされる。JPモルガンは、メディケイドの追加削減や連邦政府による薬価規制の拡大の可能性が低下するヘルスケアや、既に予算が確保されている防衛・インフラ関連が恩恵を受けやすいとの見方を示す。
民主党が両院を制するケースでは、メディケイド削減が延期・撤回されれば、医療保険の対象者が維持される病院運営関連や、支援拡大が見込まれるクリーンエネルギー関連が下支えされる一方、共和党が議会の支配を続ければ、AIインフラ整備の拡大や従来型エネルギー、電力網インフラに追い風という。
<一段高に業績裏付け必要か、AI投資に目配り>
株価の発射台が高まる中で中間選挙を迎えることになるが、UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントの小林千紗日本株ストラテジストは日本株について「(選挙後は)不透明感が解消することで、年末に向けていったん株高になるのではないか」とみる一人だ。
金利の高止まりが警戒される中ではバリュエーションの伸び余地が限られそうな一方、「業績が崩れなければ、株価には上昇余地がある」と小林氏はみている。中間選挙は、国内の3月決算企業の中間決算シーズンとも重なる。
もっとも、ねじれになれば、民主党主導でデータセンターの規制を強める機運が高まりかねず、「投資が後ずれするリスクが意識されてくる可能性がある」という。一方、次期大統領選に向けて政策変更の不確実性を意識した企業が、短期的にはAI設備投資を前倒しする可能性もあるとJPモルガンは予測する。
AI投資のスケジュールに変化が生じれば、株価にも影響が及ぶ可能性がある。日経平均で比重の高い半導体関連株の業績を直接左右しかねないだけに「選挙後もデータセンター投資を巡る動向への目配りを怠れない」とJPモルガンの西原氏は話している。
(平田紀之 編集:橋本浩)