日本企業のたとえ小さな取り組みでも、メディアが広く伝えれば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく――。そうした「発信と共創の場」をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版は2023年春、「SDGsアワード」を立ち上げました。
2026年、私たちはこの想いをさらに深化させ、ビジネスと社会貢献の融合により強くフォーカスするため、名称を新たに、ニューズウィーク日本版「サステナビリティアワード」として、第4回のプロジェクトを始動しました。
先の見えない今の時代にこそ、日本企業のたゆまぬ挑戦とサステナブルなビジネスモデルが、世界に求められています。私たちは今年も、日本企業によるサステナブルな取り組みを発信していきます。
約10人に1人が「産後うつ」に陥っている。2021年に東北大学などが妊婦約1万2000人を追跡した大規模調査によると、産後1カ月の時点で13.9%、産後1年を経た時点でも12.9%の母親にうつ症状がみられた。
しかし、出産を境に、周囲の関心は赤ちゃんへと向かいがちだ。祝いの品も支援の仕組みも、その多くは子供を対象としている。母親自身もまた、自らの心身のケアを後回しにしてしまう。
こうして人知れず我慢している産後の母親をはじめ、あらゆるライフステージの女性に寄り添おうとしているのがfor her.株式会社(東京都渋谷区)だ。女性向け食品・セルフケア商品の企画・製造・販売などを手掛ける同社の主力商品「omamori soup(おまもりスープ)」は、産後ケアや薬膳の専門家らと1年以上かけて開発した常備食だ。
潤いを補うとされる白きくらげや、鉄分豊富なビーツなどを使い、1杯ごとに薬膳の役割を持たせた。母乳や離乳食で埋まる冷凍庫を使わないよう、常温で保存できるようになっている。時間にも体力にも余裕のない産後の母親が、無理なく温かい栄養をとることができる設計だ。
「for mom.」でなく「for her.」の理由
for her.の原点には、同社社長・片山有紗氏自身の出産体験がある。2021年にアメリカで出産した際、片山氏は「産後ドゥーラ」の支援を受けた。産後ドゥーラとは、出産後の母親に寄り添い、家事や新生児のケア、精神面のサポートまでを担う専門職だ。陣痛や出産そのものを乗り切ることに意識を向けていた片山氏だったが、産後の回復にどれほどの知識と手助けがいるかを実感した。
帰国後にこの経験を話すと、日本の友人たちから驚きと共感が集まったという。産後ドゥーラの存在も、そのケアも、日本では「知らなかったから選べなかった」選択肢だった。
国際基督教大学(ICU)在学中に東日本大震災のボランティア運営に携わり、社会貢献活動を研究してきた片山氏にとって、課題意識が実体験と重なった瞬間だった。そして2023年5月に「for her.」プロジェクトを立ち上げ、産後のセルフケアをテーマにしたスープを開発・販売。同8月にfor her.株式会社を設立した。
「名称を『for mom.』ではなく『for her.』としたのは、母親という役割だけでなく、1人の女性として、その人自身の心と体を大切にしてほしいと考えたからです」と片山氏は語る。