日本企業のたとえ小さな取り組みでも、メディアが広く伝えれば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく――。そうした「発信と共創の場」をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版は2023年春、「SDGsアワード」を立ち上げました。
2026年、私たちはこの想いをさらに深化させ、ビジネスと社会貢献の融合により強くフォーカスするため、名称を新たに、ニューズウィーク日本版「サステナビリティアワード」として、第4回のプロジェクトを始動しました。
先の見えない今の時代にこそ、日本企業のたゆまぬ挑戦とサステナブルなビジネスモデルが、世界に求められています。私たちは今年も、日本企業によるサステナブルな取り組みを発信していきます。
「長く生きる」の先にある問い
人生100年時代といわれる今、「長寿」をめぐる意識や価値観は変わりつつある。ただ長生きするのではなく、できるだけ長く健やかに、活動的に暮らせるか。睡眠不足や疲労、ストレスといった日常的な不調も含め、健康を生活の中でどう維持するかは、個人だけでなく社会にとっても重要なテーマだ。
こうした課題の解決を、「細胞」という切り口から追求してきたのが株式会社カネカだ。総合化学メーカーである同社が研究する還元型コエンザイムQ10は、細胞内でエネルギー産生を担うミトコンドリアに不可欠な成分である。
コエンザイムQ10には酸化型と還元型があり、酸化型が体内で還元型に変換されてから働くのに対し、還元型は抗酸化作用を直接届けられるのが特徴だ。しかし、加齢とともに、コエンザイムQ10の総量が減少するのに加え、酸化型から還元型への変換する力も低下するという。
研究の出発点は1996年。当時、還元型コエンザイムQ10は空気に触れると容易に酸化するため、取り扱いや製品化が難しかった。市場にも研究用試薬にも存在せず、研究者は実験室で自ら作製するところから始めた。
「誰もやっていないからこそ自分たちがやるしかない」──そんな思いを抱えながら、20人にも満たないチームが吸収性や安全性、製剤化技術を1つずつ検証していった。酸化型と比べて約2倍の吸収性を持つことを確認し、ついに2002年に基本製法を確立させた。さらに創業当初から培ってきた発酵・バイオ技術を活用し、06年には世界で初めて酵母由来の還元型コエンザイムQ10の工業生産技術を確立し、量産化を実現した。
同社が続けてきたコエンザイムQ10の研究は40年以上に及び、研究実績は100件以上。グローバル特許は80件以上にも上る。素材を売るだけでなく、細胞・ミトコンドリア研究から機能性研究、製剤開発、製品化、市場啓発までを一貫して推進してきた。