Saeed Azhar Max A. Cherney Isla Binnie Stephen Nellis

[ニューヨーク 1日 ロイター] - 米半導体大手エヌビディアが、人工知能(AI)開発企業がエヌビディアのAI半導体を担保に資金を調達できる巨大市場を創設する構想を打ち出した。ただ同社の先端半導体や、それを取り巻くインフラにどれほどの価値があるのかを巡り、ウォール街で議論が巻き起こっている。銀行や投資家の答えは、どうやら「エヌビディアが考えるほど高くはない」ということのようだ。

事情に詳しい銀行関係者やクレジット投資の運用担当者の話では、一部の貸し手は、業界をリードするエヌビディアのAI半導体であっても、それだけでは担保として不十分で、融資資金回収をより確実にする仕組みを求めている。半導体が生み出す収益がどれだけ長く続くのかを見極めようとしているためだ。

AIに不可欠な演算能力を提供する半導体の価値を高く評価するエヌビディアと、より慎重なウォール街との間に見方の隔たりが生じている格好で、この溝は将来的に新たな巨額資金を呼び込もうとするAI企業にとって、資金調達上の頭痛の種になってもおかしくない。

銀行や資産運用会社の関係者は、エヌビディアが主張するように半導体を長期の担保資産として扱えるかどうかについて疑問を抱いており、この点が、半導体担保融資を柱とする総額5000億ドルの巨大融資市場構想を進める課題として浮かび上がっている。

実際複数の関係者はロイターに、同構想の下で現在具体化しつつある個別の融資案件では、このような貸し手側の懸念を踏まえ、資金回収面で確実性を高める方向で条件が見直されそうだと明かした。

インパックス・アセット・マネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、トニー・トルジンカ氏は、エヌビディアが「最先端の専用半導体は10年間にわたり収益を生み出せる」と主張していることについて、ウォール街の見方ははるかに保守的だと指摘した。

<市場構想への疑念>

エヌビディアの巨大融資市場構想に疑念が生じている背景には、AIブームを支えるデータセンターや半導体、電力供給能力に、企業や投資家が数千億ドル規模の資金を投入していることがある。そうしたAI投資は米国の経済成長を押し上げる要因ともなっているが、それだけ、複雑な資金調達スキームやコンピューティング機器の長期的な価値に関する前提条件に向けられる目も厳しくなっている。

モーニングスターのアナリストチームは最近のノートで、プライベートクレジットや、25年以上前のドットコム・バブルとその崩壊の際にも利用されていたベンダーファイナンス、循環的な取引を利用することに疑問を呈した。

エヌビディアは8月、ブラックストーン、アポロ、KKRなどの金融パートナーとともに今回の構想を発表した。構想では、AI半導体を主な担保としてエヌビディアによる追加的な信用補完措置を限定することで、AI開発企業がこうした借り入れを利用しやすくすることを想定していた。コストがかかっても、航空機リースのように資産自体の価値に基づいた融資ができる市場をAI半導体でも生み出すのが狙いだ。

エヌビディアは、一部の案件について、AI半導体の価値が将来下がっても同社が穴埋めするのは最大でも25%にとどめることが可能だとしており、これは自社製品購入をエヌビディア自体が資金面で実質的に支える「循環的な資金調達」への懸念を払しょくするためだと説明している。

だがこの価値の下支えは最近の他のAI関連の資金調達案件と比べて支援が手薄と受け止められ、ウォール街の一部では、エヌビディアはいずれ貸し手の懸念をより和らげる工夫を盛り込んだ仕組みを用意せざるを得ないとの見方が強まった。

今回の当初の資金調達グループには参加していないものの事情に詳しい銀行関係者3人は、エヌビディアが全ての案件で何らかの保証を提供する必要が出てくる可能性があると指摘する。あるいは、債務返済を確実にするため、大手テクノロジー企業など投資適格級の顧客から得られる収益によって融資を裏付けなければならなくなる可能性もあるという。

現時点では、エヌビディアのAI半導体を、航空機のような投資対象としての価値を持つ資産とみなす準備が市場には整っていない、というのが関係者の見解だ。

<確実性高める取り組み>

関係者によると、現在準備が進む数百億ドル規模の融資案件では、エヌビディア製半導体を担保とするだけでなく、顧客との契約を返済原資の裏付けとし、エヌビディア自身も一定の保証を提供する方向で検討が進んでいる。貸し手のリスクを抑えるため、当初の構想より信用面での支えを厚くする形だ。こうした条件での融資に対する投資家の需要は強いという。

エヌビディアの広報担当者は、保証を拡大する可能性についてのロイターの質問には直接回答しなかった。

エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は8月のブログへの投稿で、総額5000億ドルの構想について、循環的な資金調達への懸念に対応することが狙いだと説明した。独立した機関投資家の資金をAIインフラ市場に呼び込む一方、エヌビディアの金融パートナーが投資家から資金を集め、その資金で融資を支援する仕組みだという。

銀行関係者は、この資金供給では銀行などの貸し手に加え、プライベートキャピタルも役割を担うとの見方を示した。エヌビディアの金融パートナー6社のうち5社はこの記事についてコメントを拒否し、アポロはコメント要請に回答しなかった。

<問題は耐用年数>

フアン氏はブログへの投稿で、AIモデルの学習や推論に使われる演算能力を提供するエヌビディアのGPU(画像処理半導体)は最大10年の耐用年数があると主張し、一部で出ている懐疑論にも反論した。

これに対して、一部のクレジット投資家や銀行関係者は、半導体が実際に収益を生み続けられる期間をもっと短く見積もっている。S&Pグローバル・レーティングのディレクター、アンドリュー・チャン氏は「エヌビディアの説明では、GPUは5年を大幅に超えて稼働できるということであり、これまでのところ、それが事実であることは実証されている」と断りながらも「われわれは、そうした半導体の価値について保守的な見方をしている」と付け加えた。

銀行関係者によると、エヌビディアとの見方の違いが生じる理由の一つは、GPUの長期的な残存価値を根拠に融資判断を下すための過去のデータが、まだ十分に蓄積されていないことにある。インパックスのトルジンカ氏は「銀行は通常、GPUについて3-4年の減価償却期間を前提に審査する」と解説。これは「最上位のGPUは10年間にわたり収益を生み出せる」とするエヌビディアの見解とは異なると説明し、投資家がAI半導体を担保とする融資を引き受けるには追加的なリスクを負う見返りとして、より高い金利、より大きな財務上の余裕、さらに強力な返済保護策を求めそうだの見方を示した。

1兆3000億ドルを運用するウェリントン・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、ローレン・モラン氏も「投資家として追加的なリスクを取る以上、それに見合ってどの程度のリターンが必要なのかについて、これまで以上に選別的になるだろう」と語った。

エヌビディアは自社の主張を裏付ける材料として、大手クラウド企業がサーバーの減価償却期間を従来の3─4年から最大5─6年に延長していることを示す複数の第三者調査を挙げている。またGPUなどAI関連担保の評価を手がけるバークルによる調査に基づくと、エヌビディアの最新の「GB300 NVL72システム」は、9-10年の耐用年数を持つ可能性があるという。

<先行事例>

既に一部企業は半導体を担保とする融資を市場で実施している。ただしエヌビディアが想定する仕組みとは異なり、こうした案件ではテクノロジー企業から得られる収益が債務返済の裏付けとなっていた。

エヌビディアが出資するコアウィーブは今年、投資適格級として初となるGPU担保融資で85億ドルの融資枠を確保した。この融資には「A3」の格付けが付与されているが、その大きな理由は、貸し手が極めて確実性が高いとみられるメタからの契約上の支払いを返済原資として見込めることにある。

これとは別に、エヌビディアの競合でアンソロピック向けのAI処理能力の資金調達を支援しているブロードコムは、350億ドル規模の資金調達スキームの80%超を実質的に保証。これによって債券投資家から資金を呼び込むことができた。

エヌビディア自身も過去に、SBエナジーが中西部オハイオ州で進めるデータセンター事業の資金調達を支援するため残存価値保証を提供している、とS&Pとムーディーズが明らかにしている。

2000億ドル超を運用するTCWでグローバル・クレジット部門の共同責任者を務めるブライアン・ゲルファンド氏は、これまでの事例を踏まえて「先行案件を見る限り、債権者側はこうした資産の平均的な寿命が長いという見方を受け入れてはいないようだ」と話した。

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