Ahmed Rasheed
[バグダッド 29日 ロイター] - 米軍は30日までに、イラクに残る最後の基地から撤退する予定だ。20年以上に及ぶ戦争で米国人4500人が死亡したイラクでは、イランとその同盟勢力が今や強い影響力を持ち、撤退を勝利として歓迎している。
撤退は2024年にバイデン前大統領の下で合意され、トランプ大統領が実行に移している。イラクの安全保障専門家は、イランと有力な同盟勢力が今後、自由に活動できるようになる恐れがあると指摘する。過激派組織「イスラム国」(IS)など、米国と敵対する他の敵対が勢いを取り戻す恐れがあるとの懸念も出ている。
親イランのイスラム教シーア派武装組織を専門に研究するイラクの安全保障アナリスト、ジャシム・バハドリ氏は「有志連合が撤退すれば、長年イラクでイランの影響力への対抗勢力となってきた軍事的存在がいなくなる。このためイランは戦略的な利益を得るだろう」と述べた。
同氏は、親イラン民兵組織が米軍の撤退を自らの勝利として宣伝するだけでなく、「その勢いを安全保障や政治の意思決定への影響力拡大につなげようとする」と予測した。
イランが支援する武装勢力の連合体「イラクのイスラム抵抗運動」のヤシリ司令官は、「(米軍撤退は)イラクのイスラム抵抗勢力と誇り高きイラク国民にとって歴史的な勝利であり、米国の計画にとって壊滅的な敗北だ」と述べた。
<準備は不十分>
米軍の撤退はイラク国民の間で広く支持されているが、親イラン勢力を懸念する人々からは時期尚早との声も聞かれる。
反米抵抗運動の拠点だったファルージャのスンニ派部族指導者アブドルラフマン・ゾバイ氏は「イラクには現時点で、治安維持を引き継ぐ準備がまだ十分に整っていない」と述べた。「全てのイラク国民が完全な主権を望んでおり、異論を唱える国民はいない。しかし(米国主導の有志連合が)このような形で撤退し空白を生むことこそ、全ての国民が恐れていることだ」と語った。
米軍は2003年にイラクに侵攻し、フセイン元大統領の独裁政権を打倒した。その後イラクを占領してシーア派主導の政権を樹立し、反政府武装勢力との戦闘を何年も続けた末、11年末に撤退した。
それから3年もたたないうちに米軍はイラクに戻り、14年から17年にかけての大規模な戦争で、ISの打倒に向けイラク軍を支援した。
「イラクの自由作戦」で死亡した米国人は、同じ時期にアフガニスタンで行われた戦争の約2倍に上った。
<イランの「抵抗の枢軸」の勝利>
中東全域から米軍を撤退させることが最終目標だとするイランは、イラクからの米軍撤退を「抵抗の枢軸」の勝利だと主張している。
イラン国会国家安全保障委員会のハヤトモガダム副委員長は28日、米軍がイラクと中東地域から撤退すれば「イラクに永続的な安全が訪れる」と述べた。
イラン国会の通信社に対し、「(イランは)イラクからの米軍撤退を歓迎し、間違いなく支持する」と語った。「抵抗勢力は現在も行動しており、時に米軍を標的として対峙している」と述べた。
<IS復活の恐れ>
イラクの連邦政府と北部クルド自治地域の治安当局者の一部は、米軍撤退でISの戦闘員が息を吹き返す恐れがあると指摘する。
クルド人部隊のバルザニ司令官は、米軍による情報提供や後方支援、無人機(ドローン)がなくなれば、ISが態勢を立て直す機会を得ると警鐘を鳴らした。
イラク治安部隊によると、ISの一派とみられる組織が、米軍撤退に合わせて自爆攻撃を準備していた。治安・軍当局筋はこの計画について、同組織が依然として治安の隙を突く能力を持つとの懸念が浮き彫りになったと述べた。
石油産業の中心地である北部キルクークの治安当局高官ハリド・バヤティ氏は「(ISは)依然として強大で、流血を伴う攻撃を実行できるというメッセージを発しようとしている」と話した。