Takahiko Wada

[東京 28日 ロイター] - 日銀が7月に開いた金融政策決定会合では、基調的な物価上昇率が2%に近づく中、多くの委員が「基調的な物価上昇率を2%程度に定着させていくことを目指して政策判断を行う方向に徐々にシフトしつつある」との認識を示していたことがわかった。多くの委員はその認識の下での政策運営のあり方について「より丁寧なコミュニケーションが必要」との考えを示した。委員からは、利上げペースの加速を支持する意見が相次いだ。

日銀が28日に7月の決定会合の議事要旨を公表した。同会合では賛成多数で政策金利を1%で据え置いたが、9月17―18日の決定会合では1.25%への追加利上げを決めた。植田和男総裁は9月会合後の記者会見で、基調物価が2%を超えて上振れていくリスクが顕在化してその後の経済に悪影響を及ぼさないよう、基調物価を2%程度で安定させる観点が重要だとして「政策の局面が変化した」と述べた。

7月会合では、1人の委員が「利上げのペースが市場の想定より早まることも考えられる」と述べたほか、ある委員は、基調物価が2%で定着しつつある一方で金融環境がなお緩和的なことを踏まえれば「物価上昇リスクに特に留意し、機動的に政策金利を調整することが重要」だとした。

物価の上振れリスクが顕在化すれば経済や国民生活に「大きな打撃」となるばかりでなく、急激・大幅な利上げを余儀なくされれば「二重でショック」を与えることになるとの指摘も1人の委員から出された。この委員は、金融政策の焦点は基調物価を2%に向けて引き上げていくことから基調物価の「さらなる上振れの回避」に局面が変化しているとした上で、「以前のように『待つことのリスクが小さい』とは言えないことから、金融緩和度合いの調整をペースアップする必要がある」と話した。

基調的な物価上昇率を巡り、ある委員は、先行き物価目標と整合的な形で安定していくかどうかを評価する上では「このところ上昇してきた中長期的な予想物価上昇率が2%程度で安定的に推移していくかを、注意深く確認していく必要がある」との認識を示した。

1人の委員は、消費者物価指数を構成する品目の7割超が数年間にわたって上昇を続けていることや、予想物価上昇率に関する様々な指標が緩やかに上昇している点、ベースアップ率3%程度の賃上げ継続などを踏まえると「基調的な物価上昇率は2%ぐらいで持続的・安定的なものに定着しつつある」と話した。

賃上げを巡り、何人かの委員は「ここ数年、春闘で3%以上のベースアップ率を実現するという相場観が形成されている」とし、「今後もこうした賃上げの動きは続く可能性が高い」と述べた。

ある委員は、2022年以降のインフレ経験の蓄積で中長期の予想物価上昇率が高まる中、「足元の円安や中東情勢の影響がさらなる予想物価上昇率の上昇につながる可能性がある」と述べた。

<為替急変の中での決定会合>

7月会合は、外為市場が波乱の展開となる中で開かれた。会合1日目の30日には政府・日銀が円買い介入を行ったとみられるほか、会合後の米東部時間31日には日米両政府が協調介入に踏み切った。

7月会合では、物価上振れリスクにつながる要因として、中東情勢の緊迫化、AI(人工知能)関連需要の高まり、為替変動に留意する必要があるとの認識で一致。為替については、為替相場の消費者物価へのパススルー(転嫁)の程度についても議論した。

何人かの委員は、研究によってパススルー率の推計結果には相応の幅があるが、その計測に当たっては「近年の企業の賃金・価格設定行動の積極化や、インフレ経験の蓄積に伴う中長期の予想物価上昇率の上昇などの構造変化を十分に認識する必要がある」と指摘した。

長期金利については、複数の委員が、政策金利を適切なペースで引き上げていけば長期金利もそれと整合的に安定的に形成されていくが、「適切なペースで金利が調整されないとの懸念が強まれば、インフレリスクやそれに伴う急速な利上げリスクが意識され、タームプレミアムの上昇につながるおそれがある」と述べた。

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