Daniel Flynn Max Hunder Olena Harmash
[キーウ 17日 ロイター] - ロシアによるウクライナへの全面侵攻では、これまでに数十万人が命を落とした。同時に、この戦争は新たな兵器システムの実験場ともなり、北大西洋条約機構(NATO)にとって無視できない問いを突きつけている。すなわち、NATOが次に直面し得る戦争に備えられているかだ。
ウクライナと西側諸国の国防当局者5人はロイターに対し、戦場での変化は極めて速く、NATOの一部の兵器や戦術は時代遅れになりつつあると述べた。NATO非加盟国のウクライナが数週間単位で戦い方を変えている一方、NATOでは兵器システムの調達や開発に数年、時には数十年を要する。
ウクライナ戦争に加え、トランプ米大統領が欧州の同盟国に防衛負担の拡大を繰り返し迫ってきたことを受け、多くのNATO加盟国は国防支出を大幅に増額している。ただ、急速に変化する戦争の様相に対応できるかどうかは別の問題だ。
ウクライナの有力なミサイル・ドローン(無人機)製造企業、ファイア・ポイントの共同経営者で主任設計者を務めるデニス・シュティレルマン氏はロイターの取材に対し、約5000ドル(約78万円)のドローン1機で戦車を破壊できる現在、戦車は「無価値」になったと言い切った。もっとも欧州は戦車に巨額の資金を投じ続けており、軍事専門家の間では、将来の戦闘でも戦車には依然として重要な役割があるとの見方も少なくない。
一方、安価なドローンは、戦争のあり方を別の面でも一変させた。兵士が集団で行動したり、多数の車両が隊列を組んで移動したりすれば、それだけ容易に攻撃の標的となる。ウクライナ内務省傘下の国家親衛隊のオレクサンドル・ピウネンコ司令官は昨年、自身の部隊が訓練を行った外国部隊について「陣地を強襲する能力は高い」と評価した。一方で、「上空にドローンがいるのに、空を見上げることすらしなければ、その分隊がどうなると思うか」と問いかけた。
ロイターは6月、バルト三国の一つであるエストニアのパルディスキ近郊で、NATOの軍事演習を取材した。同国はロシアと接する約210マイルの国境の要塞化を進めている。演習では、米国と欧州の兵士らが戦時下の野戦病院で、数十人の模擬負傷者を治療した。
しかし、演習はNATOが病院上空の制空権を握るとの想定で実施された。安価で発見されにくく、長距離を飛行するドローンが普及する中、制空権の確保はもはや当然の前提ではない。
こうした中、複数のウクライナ政府高官は、同国は従来のようにNATOから訓練や支援を受けるだけでなく、ロシアとの戦争で得た教訓をウクライナ側がNATOに伝える役割が次第に大きくなっていると指摘する。一方、NATOの軍事官僚機構は、これらの教訓を十分な速さで取り入れられていないという。
ルーマニアでNATOの心理作戦訓練を受けたウクライナ軍将校に話を聞くと、NATOの一部の教材では、今も第2次世界大戦の事例がケーススタディーとして使われていた。
NATOは、訓練や官僚機構に対するこうした批判についての質問には回答しなかった。
<防空能力に弱点>
ウクライナでの戦争は、NATO当局者自身がより解決困難だと認める弱点も浮き彫りにした。それは防空・ミサイル防衛能力だ。
ロシアがウクライナ各都市への攻撃を続ける中、欧州が米国製の高度なミサイル迎撃システムに依存している実態が鮮明になった。代表例は、1991年の湾岸戦争で初めて使用された「パトリオット」だ。ウクライナでは現在、飛来する脅威を撃ち落とすパトリオットの迎撃ミサイルが深刻に不足している。
パトリオットへの依存が戦略的な弱点になりかねないとの懸念から、欧州は米国製ではない代替システムの構築を進めている。ウクライナは現在、弾道ミサイルの迎撃を目的に設計されたフランス・イタリア共同開発の新型防空システム「SAMP/T-NG」の引き渡しを待っている。フランスはウクライナへの配備を前倒しする方針を示しており、欧州の外交当局者らは以前ロイターに、来春までに到着する見通しだと語っていた。
ウクライナ国防省は声明で、ウクライナ軍とNATO軍には互いに学ぶべき点が多いと指摘。ウクライナによるドローンや電子戦の活用について「世界でも比類がない」とした一方、ロシアによるドローン・ミサイル攻撃への対応を支援する欧州の取り組みも高く評価した。
7月、ウクライナと欧州の同盟国9カ国は、新たな対弾道ミサイルシステムを共同開発する計画を含む防空連合を発足させた。「フレイヤ」と呼ばれるこのプロジェクトは約12社で構成する企業連合で、民間部門ではファイア・ポイントが主導的なパートナーとなっている。目標は、パトリオットより安価で迅速に量産できるシステムを開発し、製造を米国ではなく欧州自身の管理下に置くことだ。
ファイア・ポイントのシュティレルマン氏は、欧州の安全保障における自立について「防空システムに200億ドルを投じるのであれば、自国の安全保障を他国に依存するわけにはいかない」と強調した。