6月会談の真意

6月22日夜、片山財務相は東京から米国へ連絡を入れた。相手は何度も顔を合わせてきたベセント財務長官。事情を知る複数の関係者によると、日本側が持ち掛けた非公式のオンライン協議の場だった。日銀が政策金利を約30年ぶりの水準となる1%へ引き上げてから6日がたっていた。

片山氏は会談前、米国が協調介入に応じる可能性への期待を高めていたという。約1カ月前の訪日時にベセント氏から早期利上げの必要性を改めて指摘されており、日本側関係者は「日銀は利上げを実施した。なぜ協調介入できないのか」という考えがあったと振り返る。

しかし、ベセント氏が強調したのは従来と同じ主張だった。円安是正には金融政策だけでなく財政政策も含めたファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の改善が必要であり、政策全体の整合性が求められるという考えだ。

高市政権が昨年10月に発足して以降、片山、ベセント両氏はたびたび会談を重ねてきた。その間、成長重視の政策への期待から日本の株価は上昇したが、中東情勢の緊迫化なども重なり円安が進行、日本の長期金利も上昇した。

複数の関係者によると、ベセント氏は一貫して、日本側に巨額の財政支出を抑制するとともに利上げを進める必要があると非公式に伝えていた。たとえば1月、高市氏が消費減税を掲げて衆院解散を表明した直後に長期金利が急騰したことを受け、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の場で片山氏に懸念を伝えたことが分かっている。

ベセント氏が警戒したのは、市場が高市政権の政策をリフレ路線と受け止め、日本国債売りが米国債市場へも波及する事態だった。「米国債のトップセールスマン」を自認する同氏にとって、米国債を大量に保有する日本の政策運営は無関係ではなかった。

6月22日の協議は約1時間に及んだ。日銀の追加利上げや財政規律の重要性に加え、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による国内投資拡大、個人向け国債の拡充、介入原資を確保するための方策なども議題に上ったという。日本側の関係者は「首相周辺には利上げに慎重で拡張財政を主張する人もいるが、そうした方向ではないことをベセント氏は確認したかったのだろう」と話す。

日本の首相官邸にロイターがコメントを求めたところ、財務省の所掌事項だとして回答を控えた。財務省は「コメントは差し控える」とした。ロイターの問い合わせに対し、日銀からは回答を得られなかった。

米財務省の報道担当は、個別の非公開協議についてはコメントを控えるとした。一方、同省関係者は「金融政策の決定は日本当局が行うべきものだ」とした。その上で、「米国が円相場の秩序ある推移に関心を持つのは、特定の為替水準を目標とするためではない」と説明した。

介入への道筋