Kentaro Sugiyama

[東京 17日 ロイター] - 去就が注目されていた城内実・経済財政担当相の続投が決まり、金融市場では高市早苗政権が掲げる「責任ある積極財政」路線の維持が確認されたとの声が出ている。城内氏はリフレ政策の象徴的な存在との評価もある中、日本に政策見直しを促すベセント米財務長官への「事実上の回答」だと指摘する専門家もいる。

「強い経済と財政の持続可能性の両立に向けて経済財政運営をしっかり頑張っていきたい」。再任された城内氏は17日、記者団にこう語り、財政への配慮をにじませた。「マーケットが抱えている懸念や不安をしっかり払拭するためにも関係者としっかり意思疎通をしていきたい」とも語った。

城内氏は、人工知能(AI)・半導体など17分野への投資促進を柱とする「日本成長戦略」で、2040年度までに370兆円超の官民投資を目指す計画の取りまとめに携わった。政府の経済財政運営と予算編成の指針となる「骨太の方針」でも策定の中心を担った。

同氏の続投は、政権が経済運営の基本線を維持することを示しているが、城内氏と市場との関係が常に良好だったわけではない。26年の骨太方針を巡っては、積極財政路線や財源に対する懸念に加え、日銀の利上げへのけん制とも受け取れる原案段階の記述が市場を刺激した。円安進行やインフレ圧力の長期化への警戒から長期金利は上昇し、市場では一連の反応を「骨太ショック」と呼ぶ声も出た。

こうした経緯から、今回の内閣改造では城内氏の交代観測もくすぶっていた。特にベセント財務長官が日本にリフレ政策の見直しを促す中、市場では城内氏の去就が高市政権の経済政策スタンスを測る試金石として注目されていた。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「ベセント氏の発言に対する高市政権の『事実上の回答』という側面もある」と指摘。「リフレ政策の象徴的な存在とも言える人を残したことで、今後も財政拡張路線が続くという見方につながる。日銀の利上げ路線に対しても一定の逆風になる」と説明する。

大和証券の末広徹チーフエコノミストは、高市首相も城内氏も、米国や市場の動きなどをみて財政に配慮する姿勢を示すようになってきたが、公約実現が重要だとして「再び積極財政に寄っていく可能性もゼロではない」とみる。

<日銀との距離感>

高市政権と日銀の距離感がどうなるかも見逃せない。市場では、米国側が円安や日本の金利動向に神経をとがらせる中、高市政権が当面、日銀の利上げを強くけん制する動きにはならないとの見方が多い。

城内氏は昨年10月の就任以降、今年1月を除くすべての金融政策決定会合に出席し、政府と日銀の政策運営の接点となってきた。

もっとも、中長期的には積極財政の強化が結果として日銀の追加利上げを促す可能性もある。

日銀に勤務経験のある楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストは、日本経済がすでにインフレ経済へ移行している中、無理に高圧経済政策を推し進めれば、物価と名目賃金が互いに連鎖しながら予想を超えて上昇するリスクがあると指摘。「日本経済を強くするために何でもやるべきだという空気が政府を覆うと、過度なインフレという罠にはまるリスクがある」と警鐘を鳴らす。

その場合、長期金利はますます高まり、日銀の利上げが「より早く」、「より高く」ならざるを得なくなるという。

市場の視線は、足元の金融政策だけにとどまらない。来年以降の日銀人事も重要な焦点だ。市場でタカ派的とみられている高田創、田村直樹の両審議委員は27年7月に任期を迎える。高市政権が後任に金融緩和に前向きな人材を起用すれば、政策委員会内で緩和重視とみられる委員の発言力が高まる。

<国内政治基盤を重視か>

金融・債券市場に詳しい上野泰也マーケットコンシェルジュ代表は、今回の内閣改造について「基本的には来年の自民党総裁選をにらんだ人事という色彩が強い」と話す。党役員人事では麻生太郎副総裁への配慮がうかがえるほか、閣僚人事でも党内の有力勢力を幅広く取り込み、政権として国内政治上の隙を見せない布陣を整えたとの見方を示した。

ベセント氏は日本のリフレ政策見直しを求めていたが、結果的には経済政策の中核を担う閣僚の多くが留任し、骨格維持が優先された。

上野氏は、政権が看板政策として掲げる日本成長戦略を策定したばかりの段階で担当大臣を交代させれば、「米国の圧力で方針転換したと受け取られかねない」と指摘。政策の継続性を示すとともに、国内政治的に弱みを見せないという判断が働いた可能性があるとの見方を示した。

市場の関心は、2027年度予算の規模や財源、国債発行額の行方に移る。成長投資の拡大を優先するのか、それとも財政健全化への配慮をどこまで強めるのか。それによって長期金利の動向や国債市場の評価は大きく変わり得る。

城内氏続投そのものに対する市場の反応は限定的だったが、財政運営と金融政策正常化のバランスを政権がどう取るのか、先々の日銀人事が金融政策の方向性にどのような影響を与えるのか。円安・金利上昇を再び招きかねないだけに、市場は高市政権の経済運営を厳しい視点で見極めようとしている。

(杉山健太郎 取材協力:鬼原民幸 編集:橋本浩)

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