AIが現実世界を認識し、自ら判断して行動する「フィジカルAI」の開発競争が世界で加速している。ロボットのハードウェアが急速に進化するなか、最大の難関となっているのが、その「頭脳」だ。

家の中で働き、人間やほかの機械と接しながら忙しい一日を終えると、柔らかな布で覆われた1Xテクノロジーズ社製の人型ロボット「NEO(ネオ)」は、その日に得た膨大なデータを振り返り、学習に生かすべき経験を選び出して、不要な情報を捨てる。

ネオは、ぬいぐるみのような親しみやすさを意識して設計されている。「自宅にいるロボットには、私や子供たち、家族のことを覚えていてほしい」と、ノルウェー出身で、カリフォルニア州パロアルトに拠点を置く1XテクノロジーズのCEO、ベルント・ボーニッチは本誌に語った。同社が身体を備えた知能、つまり「ロボットの頭脳」の開発を進めるなかで、重視しているのは記憶に関する研究だ。

「最終的には、ロボットも夢を見るようになる。その日に経験したことをすべて取り込み、いわば学習に反映させる必要があるからだ」と、ボーニッチは言う。

こうしたロボットを実現するカギとなるのが、周囲を認識し、自ら判断して行動を決める「頭脳」、フィジカルAIだ。

人類史上でも特に重要な技術開発競争の1つが熱を帯びている。人間とともに考え、現実世界でさまざまな作業をこなせるロボットの「頭脳」をつくり、家庭や工場、病院をはじめとする職場を一変させようという競争だ。その難易度は、今や身近になったAI言語モデルの開発をはるかに上回る。人間最速のスプリンターより速く走れるロボットまで登場し、中国がロボットのハードウェア開発で存在感を強める一方、「頭脳」の開発では、アメリカが中国に後れを取っているわけではない。

ロボットの「頭脳」をつくる競争
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