Nandita Bose Nathan Layne
[ダラス 11日 ロイター] - トランプ米大統領は9、10日に開いた共和党史上初となる中間選挙のための党大会で、選挙を自身の信任投票と見なすよう有権者に呼びかけるという、リスクの高い賭けに出た。
南部テキサス州ダラスで開催した党大会で、トランプ氏は「自分(の名前)が投票用紙に記載されていると仮定してほしい」と訴えた。共和党は党大会を皮切りに、トランプ氏を前面に押し出した選挙戦を展開する構えだ。
しかしダラスに集まった共和党員に取材すると、この戦略に対する不安の声が聞かれた。トランプ氏を強く支持する参加者の一部でさえ、インフレや対イラン戦争を巡り有権者から懸念を向けられるトランプ氏が、この接戦で最強の「伝道者」になり得るのか疑問視している。
ロイターは、共和党の最も熱心な支持者、寄付者、活動家の中から15人に話を聞いた。そのうち5人は、共和党が議会過半数を維持する上で獲得する必要がある無党派層に対し、トランプ氏のアピールは効果が薄いのではないか、との疑問を口にした。
接戦区で出馬している一部の共和党議員も同様の懐疑心を抱いている。
西部ワシントン州出身で共和党に献金しているレン・ヘリテージ氏は「トランプ氏が岩盤支持者を元気づけているのは間違いなく、党大会を開くのは良い案だったと思うが、この訴えが全ての人に効くかとなると確信が持てない」と語った。
ヘリテージ氏は、9日夜のトランプ氏の基調講演を聞いて同氏への評価が高まったとしつつも、同氏が共和党のメッセンジャーとして最適かについては「そう思う気持ちもある一方で、非常に慎重になっている自分もいる」と胸の内を明かす。
党大会が開かれたアメリカン・エアラインズ・センターの収容人数は2万1000人で、トランプ氏が基調講演を行った際、フロア席は満席だったものの、上層階や数百に上るサイドシートは空席のままで、中間選挙に向けてトランプ氏の政治的強さを見せつけるという意図はくじかれた。聴衆の規模に長年執着してきたトランプ氏は、会場は満員だと繰り返し主張した。
それでも、ロイターが取材した共和党員15人のうち10人は、トランプ氏を前面に押し出すことが党にとって最善の戦略だと語り、共和党有権者を発奮させる同氏の能力は、全体的な不人気によるリスクを上回ると指摘した。また大半は、トランプ氏が岩盤支持層以外の有権者も取り込めるとの自信を示した。
<トランプ氏の賭け>
8月28―31日に実施されたロイター/イプソスの世論調査では、トランプ氏の全体的な支持率が33%と任期中の最低を更新した。内訳を見ると、共和党員の支持率は就任当初の91%から82%に低下し、無党派層の支持率は39%から22%へと、より急激に低下した。
共和党の参謀であるブライアン・ダーリング氏は、トランプ氏の最も熱心な支持層は、同氏が投票用紙に載っていなければ投票所に足を運ばない場合があると解説。トランプ氏を中心に共和党の選挙戦を組み立てることは「明らかにリスクのある戦略」ではあるが「それでも代替案よりはマシだと思う」と語った。
野党民主党はこの戦略を歓迎している。「自分が投票用紙に載っていると仮定してほしい」というトランプ氏の訴えは、選挙を同氏の経済およびイラン戦争への対応に対する信任投票にしようと考える民主党の思惑通りだという。
共和党大会に参加したテキサス州の弁護士、クリスティーン・ガードナー氏は、トランプ氏が前面に出ることによるデメリットがあったとしても、民主党で左派団体「アメリカ民主社会主義者(DSA) 」の支援を受けた候補が台頭していることによる悪影響によって相殺される可能性があるとみている。
ガードナー氏は「彼(トランプ氏)が共和党に及ぼし得るマイナスを上回るほどのプラスを、DSAが共和党にもたらしてくれそうだ。無党派層は『ちょっと待て、それはやりすぎだ』と言うだろう」と語り、「知っている悪魔の方がまだマシ」という話だと説明した。
共和党大会の登壇者らは、民主党を米国民の生活様式を脅かす危険な反米過激派として描き出そうとした。共和党は中間選挙を、米国のアイデンティティーおよび価値観を巡る戦いと位置付け、有権者を奮い立たせる戦略だ。
<唯一のメッセンジャー>
ただ、民主党への恐怖がトランプ氏への懸念を上回ると安易に想定できない大接戦区では、そうしたメッセージはあまり受け入れられない可能性がある。
南部テネシー州の共和党議員の窓口役であるリック・ウィリアムズ氏は、トランプ氏の訴えが無党派層に響くかどうかは自分も確信が持てないが、それが党大会の主な目的ではないと言う。
「彼が私たちの唯一のメッセンジャーだ。そのメッセージは、2年前にトランプ氏に投票した支持者に向けられたものであり、今回も投票に行けよ、ということだ」と力説した。
テキサス南部の共和党員、タラコ・コスティニ氏(59)は、トランプ氏を戦略の中心に置くことにはリスクが伴うとしながらも、伝統的な中間選挙の戦術から脱却してみる価値はあると主張。「古いやり方を続ける必要がどこにあるだろう?そんなものは機能しない。だからやろう。新しいことに挑戦してみよう」と語った。