Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 14日 ロイター] - 内閣改造や党役員人事が迫る一方で、高市早苗首相が年末にかけて編成作業を本格化させる来年度(2027年度)当初予算案の財源確保を危惧する声が政府・与党内から出始めている。高市氏がメディアのインタビューで、新規国債の発行額を40兆円規模に抑えるとも取れる発言をしたからだ。投資拡大や防衛費の増額を念頭に、「軌道修正を余儀なくされるだろう」と話す関係者もいる。
<「首相が事実上のキャップをはめた」>
読売新聞が8月27日に実施したインタビューで、高市氏は「予算編成過程で税収動向などを見極めながら歳出・歳入両面の見直しを進める」などとし、持論である債務残高対GDP(国内総生産)比の安定的引き下げに意欲を示した。その上で、25年度の国債発行額が補正予算編成後でも前年度以下の40兆円程度に抑えられているとし、来年度予算についても「同様の取り組みを当然行っていく」と述べた。
複数の政府関係者はロイターの取材に、来年度一般会計の新規国債発行額を40兆円程度と想定し、予算編成作業に臨む方針であると語っている。財政に携わる関係者の一人は「首相が事実上のキャップをはめたようなものだ」と話した。
各省庁が8月末までに財務省に提出した一般会計の概算要求額は、過去最大の143.1兆円に上る。一方、政府は高市政権が発足して以降の25年度補正予算と今年度予算を合わせた140.6兆円を比較対象にするべきとの立場で、片山さつき財務相も「大幅な増額との指摘は当たらない」との見方を示している。
<「階段が一つ増えた」>
ただ、財政に精通するある関係者は、高市氏が「40兆円」という具体的な金額に言及したことを「説明不足であり、失言だった」と述べた。概算要求段階では、防衛省などが金額を示さない事項要求を実施。装備品などの調達に国債を直接充てることは困難だが、同関係者は「防衛財源を確保するためにも国債発行額は増額せざるを得ない」とも話した。
その上で、高市氏が言う「40兆円」はあくまで一般会計を念頭に置いたものだと強調し、「『強く豊かな日本』投資枠」に基づく経済安全保障関連の投資など別枠管理の財源を含めれば、「発行総額は相当に膨らむことになる」と解説。「高市氏は『もともと一般会計について述べたものだ』と言うだろうが、市場は別枠も含めた発行額を見ている」とし、予算編成過程で高市氏が改めて説明し、軌道修正を図る場面が出てくるかもしれないと述べた。
同様の懸念は自民党内からも出ている。党の防衛政策に携わる衆院議員は、必要な防衛費を考えれば来年度から7─8兆円を積み増す必要があるとの考えを示し、高市氏がキャップをはめたことで防衛財源の確保に影響が出ないか懸念していると説明。別枠を含めて40兆円を大きく超えた場合を念頭に、「国民や市場の理解を得るための階段が一つ増えた」とも指摘した。また、政務三役経験者は「仮に来年度は40兆円程度にできたとしても、物価上昇による税収増を先食いしているのがいまの状態だ。いつまで続けられるかはまったく分からない」と述べた。
<「特別会計で別枠管理する」>
政府の見解はどうか。片山氏は4日の記者会見で高市氏の発言内容を紹介し、「当初予算と補正予算を通じた通年の国債発行額を適切にコントロールしながら必要な財政需要もしっかりと対応する方針だ」と話した。記者団が40兆円が目安になるのか問うと、「おっしゃったということは非常に重いことであるということは(高市氏自身も)分かっておっしゃっておられる」とし、「我々はいま言ったような方針できちんと歳出・歳入の全面的な見直しをやっていく」と語った。
とはいえ、40兆円という金額が一人歩きし、予算編成過程で別枠などを含む実額とのギャップが大きくなれば、市場の新たな「ショック」にも繋がりかねない。前出の関係者は、政府の大きな方針である「責任ある積極財政」を体現するためにも、高市氏には国債発行総額の見通しについて「解像度の良い説明」が求められると付け加えた。
高市氏が発言した「40兆円」の真意と政府の方針について、木原稔官房長官は14日の記者会見でロイターの質問に答えた。木原氏は、高市氏の発言が25年度の国債発行額を例に挙げ「同様の取り組みを行っていくという趣旨」のものだったと説明。政府が進める「予算編成改革」の中で、当初予算と補正予算を通じた通年の国債発行額を適切にコントロールしつつ、必要な財政需要に対応していく方針を改めて強調した。
その上で、別枠としている政策の財源については「特別会計において別枠管理することとしている。具体的な取り扱いは予算編成過程で検討していく」と語った。
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)