Dan Catchpole Sabrina Valle

[シアトル 10日 ロイター] - 航空宇宙サプライチェーン業界で企業の合併・買収(M&A)が加速している。米航空機大手ボーイングと欧州航空機大手エアバスの生産計画がより明確になり、買い手側が長期的な需要見通しに自信を持てるようになったことが背景にある。業界データやM&A関係者、サプライヤーへの取材で明らかになった。

航空宇宙・防衛分野に特化した投資銀行ジェーンズ・キャピタル・パートナーズによると、今年1-8月に公表された民間航空宇宙関連のM&A件数は154件に達し、年間最多だった2019年の159件に迫る勢いだ。

買収企業は熟練労働者や高度な製造技術、生産能力を持つサプライヤーを積極的に獲得。航空機生産の拡大に対応するためで、主要メーカー自身も重要部品の供給確保を目指している。

GEエアロスペースは今週、鋳造部品メーカーのコンソリデーテッド・プレシジョン・プロダクツを120億ドルで買収すると発表した。航空機エンジンの増産を急ぐ中での大型案件となる。

またパーカー・ハネフィンは5月、プライベートエクイティ(PE)大手KKRから、アクチュエーションシステムや降着装置システムを手掛けるサーコアの航空宇宙部門を26億ドルで買収することで合意した。

ただ大半の案件は戦略的買収者やPEファンドによる中堅・中小サプライヤーの買収が占める。ジェーンズ・キャピタルのデータによると、今年1-8月の154件の取引総額は140億ドル。昨年通年は157件、総額375億ドルだった。

取引件数は19年に159件、総額213億ドルでピークを迎えたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた20年には82件、総額33億ドルまで落ち込んだ。年間の取引総額としては、106件で総額594億ドルを記録した15年が過去最高となっている。

ボーイングの航空機納入数は、一連の経営危機の影響で大きく変動した。18年の806機から20年には157機まで落ち込んだ後、23年には528機まで回復した。しかし生産品質問題の影響で翌年は348機へ減少した。

それでもボーイングは主力機「737MAX」の生産を安定化させ、生産拡大に着手しており、サプライヤーにとって将来需要の見通しが立てやすくなった。昨年の納入機数は600機と18年以来の高水準となり、今年はこれを上回る見込みだ。

エアバスの生産も新型コロナ禍で減少したが、その後は着実に回復。今年は870機の納入を目指しており、2019年の過去最高記録である863機を上回る見通しだ。

投資銀行3ワイヤー・パートナーズ創業者のアニタ・アンテヌッチ氏は「生産拡大ペースとM&A件数の増加率を比較すると、ほぼ同じ動きを示している」と指摘した。

銀行関係者の話では、売却を検討していた企業が市場に戻ってきていることもM&A活発化の要因だ。多くのPEファンドは、新型コロナ禍による生産変動や在庫膨張で企業価値の算定が難しかったため、投資先企業の保有期間を通常より長くしていた。

ジェーンズ・キャピタルのマネジングディレクター、スティーブン・ペリー氏は「買い手も売り手も、自社の将来売上高を予測することができなかった」と振り返る。

ただ生産ペースが安定し将来予測が容易になるにつれ、ボーイングが抱える問題が残る中でも、買い手は買収対象企業の将来的な業績を織り込んだ価格評価を行いやすくなっている。

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