Lucia Mutikani
[ワシントン 10日 ロイター] - 米労働省が10日発表した8月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は前年比5.4%上昇した。伸びは7月の4.8%から加速し、予想の5.3%も上回った。エネルギー価格の再上昇が影響した。財、航空運賃、病院サービスのコストも上昇し、来週の米連邦準備理事会(FRB)による利上げの可能性が高まった。
ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフエコノミスト、カール・ワインバーグ氏は「今回の統計は供給過程でのコスト上昇を示しており、今すぐ利上げを望む米連邦準備理事会(FRB)メンバーの主張を後押しする」と述べた。
前月比では0.4%上昇と、伸びは7月の0.1%から加速。予想は0.4%上昇だった。
エネルギー価格は前月比4.2%上昇した。米国とイランの敵対関係が再燃し、原油価格を押し上げた。エネルギー価格は2カ月連続で下落していた。食品価格は0.1%上昇。7月は0.9%下落していた。
ディーゼル価格は24.1%急騰し、1.1%加速した生産財コスト上昇の3分の1超を占めた。ディーゼル価格は過去最高水準にある。ガソリン価格もジェット燃料と同様に前月から上昇した。
LPLファイナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチ氏は「イランとの紛争が多くの予想より長引く中、インフレ圧力は一段と定着しつつあり、インフレの構図を変えるほど強力な材料を投資家は探している。このペースでは、来週の利上げは実現しそうだ」と述べた。
生産財の価格は1.1%急伸した。変動の大きい食品とエネルギーを除くと0.4%上昇。サービス価格は0.1%上昇と、7月の0.2%上昇から伸びは鈍化した。ただ、道路貨物輸送のコストは2.0%急伸し、航空運賃は7月の3.1%下落から一転して4.2%急騰した。病院の外来医療コストは0.4%上昇、入院医療は0.5%上昇した。
米連邦準備理事会(FRB)はインフレ目標2%の指標として個人消費支出(PCE)物価指数を注視している。PPIの一部項目はPCE物価指数の算出に反映される。ただ政府は8月から、変動の大きいポートフォリオ運用・投資助言サービス、法務サービス、コンピューターソフトウエア・付属品の価格算出方法を変更しており、これによりPPIがPCE物価指数に与える影響が変わる。
食品とエネルギーを除くPCE物価指数で大きな変動要因となってきたポートフォリオ運用の項目は、推計値に置き換えられる。
ライトソンICAPのチーフエコノミスト、ルー・クランドール氏は「同時に、家計向け法務サービスとコンピューターソフトウエアについて、PPIに基づく新たな推計手法が加わる」と指摘。「その結果、8月分についてPPIデータからPCE物価指数への寄与度を読み解く際の確信度は、通常より低くなるだろう」と述べた。
PPIデータに基づき、エコノミストは8月のいわゆるコアPCE物価指数の伸びが0.3%に切り上がる可能性があると試算した。コアPCEインフレは7月に0.2%上昇していた。
モルガン・スタンレーのエコノミストは、算出方法の刷新により2026年の1─4月のPCEインフレ統計は下方修正される可能性があるが、5─8月の数字は大きく変わらないとの見方を示した。「その結果、7月までのコアPCEインフレの前年比と6カ月年率換算の伸びは、現在のそれぞれ3.3%、3.5%から、おおむね3.1%、3.2%に下方修正される可能性があると見積もっている。5─7月の月次データが大きく修正されるとは見込んでいないため、7月までの3カ月年率換算のペースは3.0─3.1%前後でおおむね変わらないはずだ」とした。
CMEのフェドウオッチによると、金融市場では9月15─16日のFRB会合で0.25%ポイント利上げが行われる確率が、PPI発表前の62%から約70%に上昇した。
BMOキャピタル・マーケッツのチーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は「ウォーシュFRB議長のジャクソンホールでのタカ派的な発言は、次回FOMCでの同氏の裁量の余地をほとんど残していない」と指摘。「債券市場に対してインフレ抑制の信頼性を保ちたいのであれば、全てのデータ、特にインフレが同じ方向、つまり利上げを指し示す場合、行動を余儀なくされるだろう」と述べた。