Joseph Ax

[7日 ロイター] - 米国の中間選挙は、レーバーデー(労働者の日)の7日に選挙戦が事実上、追い込みの段階に入った。11月3日の投票日までわずか2カ月となった時点でトランプ大統領の支持率は極めて低く、連邦議会の上下両院で僅かながら過半数を握る共和党が議席を維持できるかどうかが危うくなっている。

専門家によると、中間選挙は何よりもホワイトハウスの主である大統領に対する信任投票という側面が強い。トランプ氏が米政界で10年近く圧倒的な存在感を示してきたことで、こうした傾向は一段と強まっており、トランプ氏は大統領任期最後の2年間に厳しい政治的逆風に直面する可能性がある。

民主党が、現時点で優勢とみられる下院で過半数を奪還すれば、トランプ政権を対象とした調査を本格化させて政権に大きな打撃を与えられるほか、法案の大半についてホワイトハウスに妥協を迫ることが可能になる。民主党指導部はすでに、トランプ氏の行為を「腐敗」と位置付け、捜査を開始する意向を表明している。

アナリストによると上院は接戦だが、民主党が過半数を握ることができれば、トランプ氏が指名する多くの政府高官の承認を阻止できる。最高裁判事に空席が生じた場合もだ。

民主党も中道派と左派の思想的分断など内部に課題を抱えているが、それでも、トランプ氏の支持率の低さは共和党にとって重い足かせとなっている。

最新のロイター/イプソス調査によると、トランプ氏の支持率は過去最低水準に落ち込んでいる。イランとの戦争や経済運営に対しても、有権者の幅広い層が不満を示している。不支持率が支持率を上回る幅は2018年の同時期のほぼ2倍だ。当時の中間選挙では、民主党が下院で40議席を奪い返した。

投票意欲は共和党より民主党の有権者の方が強い。これは、最近行われた特別選挙や予備選挙で民主党の投票率が好調だったことからも裏付けられている。登録有権者を対象とした調査では、民主党候補への支持が共和党候補の支持を5ポイント上回った。

民主党には歴史的側面からも追い風がある。1938年以降の中間選挙で、大統領を擁する党が下院の議席を減らさずに済んだのはわずか2回しかない。

クック・ポリティカル・リポートの上院選担当アナリスト、ジェシカ・テイラー氏は、「有権者にとって最大の問題である『生計費』に大統領が取り組んでいない、という受け止め方が広がっていると思う」と指摘。「中間選挙で大統領への不満を表明したければ、大統領の政党に反対票を投じるしかない」と述べた。

もっとも、民主党も課題と無縁ではない。党内の一連の選挙で、民主社会主義者を含む反主流派の急進左派候補が、党主流派が支援する中道派を破っており、党の指導部そのものやメッセージ発信、結束に疑問が生じている。

共和党には構造的な優位がいくつか残っている。両党は今年、10年に1度という前例を破って選挙区割り変更「戦争」を繰り広げ、共和党の方が自党に有利な区割り変更をより多く実現。同党はそれだけで最大10議席を上積みできる可能性がある。

11月3日の選挙では、下院の435議席全てと、上院100議席の約3分の1が改選される。

<トランプ氏の地盤で勝てるか>

一方、上院の選挙区情勢は民主党にとってさらに厳しい。ジョージア、メーン、ミシガン、ノースカロライナの激戦を民主党が制したとしても、2024年の大統領選でトランプ氏が2桁の得票差で勝利した4州、すなわちアラスカ、アイオワ、オハイオ、テキサスのうち、少なくとも2州で勝利する必要がある。

民主党の候補者自体は全国的に見て共和党候補を上回る資金を集めているが、共和党全国委員会など党組織や共和党系のスーパーPAC(政治活動委員会)は、民主党側を大きく上回る資金を確保。トランプ氏自身のスーパーPACも4億ドルの選挙資金を蓄えている。

民主党の選挙戦略家ジェシー・ファーガソン氏は、「民主党が総得票数で勝つことに疑いはない。問題は、こうした構造的な障壁によって過半数獲得が阻まれるかどうかだ」と述べた。

トランプ氏率いる共和党は、民主党を社会主義者、さらには共産主義者と描き出そうとしており、ミシガン州の民主党上院候補で急進左派のアブドゥル・エルサイード氏らが標的となっている。

ただ、生活費の高騰に対する有権者の不満が広がるなか、共和党の攻撃が有効かどうかは不透明だ。特に上院の激戦が予想される複数の州では、トランプ氏の政策による影響が他の地域より大きく表れているようだ。

アイオワ州では、農家がエネルギーコストの上昇やトランプ氏の関税による打撃を受けている。一方、テキサス州の畜産農家は、トランプ氏が外国産牛肉に対する輸入関税を引き下げる決定をしたことに反発。ミシガン州とメーン州では、隣国カナダとの間でトランプ氏が激化させている貿易戦争の影響を受ける可能性がある。

共和党は今週、異例の中間選挙向け党大会を開催する。党幹部は、この大会を通じて支持基盤へのテコ入れを図るとともに、トランプ氏による減税などの実績を有権者に印象付けたい考えだ。

ただ、2日間とも演説するトランプ氏が大会の焦点となることで、苦戦を強いられている共和党候補と大統領との結び付きを強調する結果となり、逆効果になる可能性もある。

生活費の負担や戦争が主要な争点となる一方、多くの選挙戦では、医療保険、イスラエルによるガザでの戦争、データセンターをめぐる議論も焦点となる見通しだ。

投票日までまだ8週間ある。政治の議論の焦点を次々と変えてしまうトランプ氏特有の能力を考えれば、これは永遠にも等しい長さだ。しかしアナリストらは、経済に対する有権者の否定的な見方を共和党が変えるには、すでに手遅れになっている可能性があると指摘する。

バージニア大学政治センターの選挙専門家、カイル・コンディク氏は、「共和党は支持者の熱気をさらに高められることができるのだろうか」と問いかけた。そのうえで、「できないなら、反転はもはや不能で、トランプ氏の支持率は致命的な段階に入っているということだ。私にとっては、それが今回の選挙の最大の問いだ」と述べた。

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