先月、ネパールと中国・チベット自治区の国境地帯を襲った壊滅的な鉄砲水をきっかけに、960キロ以上離れたインド国境近くで進む巨大水力発電計画にも注目が集まり、中国はヒマラヤにおける戦略的権益をめぐる「情報戦」への対応を迫られている。計画の詳細はいまなお秘密のベールに包まれている。
8月26日、氷河の崩落によって引き起こされた洪水で1300人以上が死亡し、最大でその4倍に上る人々が現在も行方不明となっている。行方不明者には数十人のアメリカ人も含まれる。
アメリカ地質調査所(USGS)によると、レンデ川とトリシュリ川では、氷河の崩落で生じた氷や水、巨石、さらに途中で巻き込まれたがれきなどが、約100キロ下流のネパール中部まで流れ下った。
最新の分析によれば、中国側の上流には水力発電所がなく、中国のインフラ事業が氷河の崩落そのものに影響した可能性はない。ただし、川沿いの土木工事を主に担ってきたのは中国で、専門家の間では、渓谷に建設された橋や道路、建物が土石流の速度や性質を変化させた可能性も指摘されている。
ネパールへの影響力拡大を中国と競うインドの対中強硬派は、ヒマラヤで発生したこの種の災害としては過去最悪となった今回の洪水について、チベットで進む中国の水力発電計画が下流域にもたらすリスクへの警鐘と捉えるべきだと主張している。中国側も反論に乗り出している。
次のページ