Abhirup Roy

[サンフランシスコ 4日 ロイター] - 米電気自動車(EV)大手テスラが、ハンドルもペダルもミラーもない2人乗りロボタクシー(自動運転タクシー)専用車両「サイバーキャブ」による配車サービスを開始したことで、規制の限界が試されることになる。

同社が米南部テキサス州オースティンでお披露目イベントを開催したわずか数時間後、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、サイバーキャブ約1000台に対する監査を開始したと発表した。同車両が連邦政府の自動車安全基準に適合していると判断した根拠を調べるためだ。

何十年も前に作成された米国の規制は手動操作を前提としたもので、連邦安全基準に従わない車両の商業運用を制限している。しかし業界の専門家らは、規制にはグレーゾーンがある上、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の訴訟も辞さない過去の対応を踏まえれば、同社はいずれにせよサイバーキャブの普及を推し進めるチャンスを得そうだとみている。

イベントには熱狂的なテスラファンやインフルエンサーが集まった。テスラは現在主力車種「モデルY」でロボタクシーを展開しているが、これにサイバーキャブが加わることになる。

テスラは、誰でもサイバーキャブの乗車サービスが利用可能だとしており、幹部らは料金プランについても説明したが、実際に課金を開始したかどうかについては具体的に言及しなかった。

金色でバタフライドアを備えたサイバーキャブは、自動運転ソフトウエアとロボティクスに会社の命運を賭けるマスク氏の戦略を体現する。この賭けにより同社の株式時価総額は1兆4000億ドル(約218兆6800億円)に達し、世界の大手自動車メーカー上位数社の合計をも上回っている。

多くの国では事前に規制当局の許可を得なければ新しいモデル・技術を市場投入できないが、米国では自動車メーカーが連邦基準を満たしていることを自己認証することで、公道で車両を走らせることが可能だ。

消費者団体「センター・フォー・オート・セーフティー」の責任者であるマイケル・ブルックス氏は「サイバーキャブが連邦自動車安全基準に適合し得ることを示す合理的な解釈があるとは思わない」と述べた。

NHTSAは自動車安全基準の変更を通常より迅速に進めるとともに、無人運転車両に対応した新ルールを策定中だ。しかし専門家らによると、こうした取り組みが実際に効力を持つには、マスク氏が約束しているよりも遅くなる公算が大きい。

ただ、マスク氏は規制を待つタイプではない。カーネギーメロン大学の工学教授で自動運転車両安全の専門家であるフィリップ・コープマン氏は「テスラはこれまで規制の限界を試し、押し広げてきた」とし、「テスラは限界を試しにいくに違いない」と語った。

コープマン氏は、マスク氏が自動車規制の「創造的な解釈」を編み出し、サイバーキャブが連邦基準に準拠していると主張して市場に「大量投入」すると予想する。「NHTSAや州の規制当局が結論を出すまでには数年を要するかもしれない。その間、テスラは公道で運行を続ける可能性がある」

テスラはコメント要請に応じなかった。

<従来型の制御装置がない車両>

テスラは4月にサイバーキャブの製造を開始し、マスク氏は生産量が年内または来年に「指数関数的」に増加するとの見通しを示した。2024年の発表時、同氏は同車両を3万ドル未満で販売するとも述べていた。

ただ専門家らが疑問視するのは、サイバーキャブが適切に自律走行できるかどうかだ。テスラは、同車両で使われている自動運転支援ソフト「フル・セルフドライビング(FSD)」が人間のドライバーより最大10倍安全であり、テキサス州のオースティンでのサービスでは致命的な事故は発生していないと主張している。しかしFSDを訓練した複数のテスラ元従業員に対するロイターのインタビューによると、基本操作のレベルで苦戦が続いている。

自動運転規制に詳しいサウスカロライナ大学のブライアント・ウォーカー・スミス法学教授は「テスラの能力に関する公開情報の中で、従来の制御装置を持たない車両に求められる幅広い条件下で、同社が自動運転システムを安全かつ確実に展開できるレベルに近いことを示唆するものは何もない」と述べた。

<公道投入への道筋>

NHTSAは安全基準に適合しない車両について、自動車メーカーが申請できる適用除外手続きを設けている。ただし、これには年間の導入台数2500台までという条件がある。

テスラのチーフエンジニア、ラーズ・モラビ氏は今年、交流サイト(SNS)のXで、サイバーキャブはこの上限の対象にはならないと投稿した。またNHTSAは過去に、テスラが免除申請を行っていないと説明していた。

このためテスラは自己認証の道を選択したのではないかという観測が広がった。

ただ、前例を見る限り、見通しは明るくない。アマゾン・ドット・コム傘下の自動運転技術企業ズークスは、車輪付きのトースターオーブンのような外観で、向かい合う2列のベンチシートを備え、運転操作装置のない車両を展開しているが、自己認証の道を試みて失敗した。

ズークスが同車両を認証した後、NHTSAが調査を開始し、最終的に同社は認証を取り下げる羽目になった。もっとも、その約1年後の今年7月、同社は限定的な商業運行の認可を取得した。

NHTSAの元幹部3人はロイターに、NHTSAとテスラとの間で自己認証を巡る対立が生じた場合、法廷闘争に発展する可能性があると指摘。そのうちの1人は「こうしたことは時々起こるが、重要なのはNHTSAが常に勝訴してきたわけではないということだ」と語った。

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