Hiroko Hamada
[東京 1日 ロイター] - 国内長期金利の上昇基調が続くなか、中位クラスの地銀株のパフォーマンスが好調だ。貸出金利の引き上げに伴う利ざや拡大が業績を押し上げる構造が評価されている。半面、調達コストの上昇で利益圧迫が目立つ銘柄のパフォーマンスは見劣りし、選別も進んでいる。市場では「銀行株=買い」の見方は一巡し、金利上昇のメリットとデメリットを投資家が慎重に見極める局面に入ってきたとみられている。
<中位地銀、パフォーマンス上位に>
国内の長期金利が節目の3%目前で推移する中、東証33業種の銀行業は年初来49.1%上昇し、TOPIXの21.9%を大きく上回っている。とりわけ活況なのが中位銀行の株価だ。
日銀の利上げが始まった2024年3月以降、メガバンク株の上昇が先行していたが、26年の個別銘柄の年初来パフォーマンスをみると、三菱UFJフィナンシャル・グループの47.6%上昇、三井住友フィナンシャルグループの38.3%上昇に対し、福井銀行が2.7倍、山形銀行が2.3倍、秋田銀行が2.2倍と一部の中位地銀株の好調ぶりが突出している。
SBI証券の企業調査部シニアアナリスト・鮫島豊喜氏は「国内の貸出需要が高く、ネガティブ材料が少ない点が銀行株の支えになっている」と指摘する。日銀が公表した7月の貸出・預金動向によると、総貸出平残の前年比は第一地銀が4.6%増で、国際的に事業展開する都銀の8%増には見劣りするが、年初来4%台後半で推移している。
銘柄名 コード 貸出金利息と預金利 年初来上昇率
息の差の伸び
秋田銀行 8343.T 14.30% 2.2倍
山形銀行 8344.T 14.10% 2.3倍
あいちFG 7389.T 13.90% 2.1倍
大分銀行 8392.T 13.40% 2.3倍
福井銀行 8362.T 12.30% 2.7倍
阿波銀行 8388.T 5.66% 2.2倍
ちゅうぎんFG 5832.T 8.20% 44.6%
東和銀行 8558.T 6.50% 36%
清水銀行 8364.T 3.30% 30.6%
トモニHD 8600.T 2.90% 43.2%
地銀再編の動きも地銀株買いにつながっているという。UBS証券のアナリスト・丹羽孝一氏は「大型の銀行が小規模な銀行を買ったり、中型の金融機関同士がアライアンスを組んだりするなど、今後も地域金融機関の再編は構造的に進むとみられている点も、銀行株の支え」と話している。
<低位地銀出遅れ、コスト高が圧迫>
一方、預金金利の引き上げによる調達コストの上昇が利益を圧迫している銘柄は、株価パフォーマンスで見劣りしている。「上位地銀や中位地銀は業績改善がみられるかもしれないが、低位地銀は個別の業績次第で選別が進んでいる」(立花証券のアナリスト・馬場正夫氏)との声も聞かれる。
日興リサーチセンター、リサーチ・コンサルティング部の武田泰典氏は「(決算短信上の)貸出金利息と預金利息の差の伸びで大まかな地銀の収益状況は確認できる」と指摘する。例えば、直近1年の、貸出金利息から預金利息を差し引いた額の伸び率を比較した際、パフォーマンス上位の地銀は伸び率が12―14%台で推移しているのに対し、低位の地銀は伸び率1桁台にとどまる。
武田氏は「1県に3つ以上の地銀があるなど、預金金利の引き上げ競争が激しいところや、ネットバンキングで全国向けに高い金利で預金を集めている銀行も見受けられ、調達コストが拡大している銀行もあるのが実情」と話す。
今後は「保有する債券の含み損をカバーできる銀行と、できない銀行とで選別が進んでいくのではないか」(楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリスト・土信田雅之氏)との声も聞かれる。
<長期金利、上昇続くか見極め>
地銀株は引き続き市場金利に連動しやすい相場が続きそうだ。政策金利のターミナルレート(到達点)が切り上がれば、銀行株の上昇余地も生じるとの思惑がある一方、利上げ余地には懐疑的な見方もつきまとう。「実際に政策金利が2%以上まで引き上げられれば良いが、それ以降で利上げが継続できないとなると、(銀行株には)売りが出そうだ」(国内証券・銀行セクターアナリスト)との指摘もある。
立花証券の馬場氏は、9―10月の会合で日銀が利上げに踏み切ったとしても、10年債利回りが連動して上昇するかが、銀行株の先行きを占う上で焦点になるとみている。日銀の早期利上げは市場がすでに織り込んでおり「利上げによって将来のインフレが抑えられるとの見方から長期金利が連動して上がりにくくなる可能性もある」との見方を示した。