「スレンダーマン」は映画が失敗し、事件を引き起こした

そのクリエーターの1人がパーソンズだった。22年、16歳のパーソンズは9分の動画「バックルームズ(ファウンド・フッテージ)」を作り、ケイン・ピクセルズ名義でYouTubeに投稿した。

黄色い廊下の迷宮に閉じ込められた男を一人称視点で描いたVHS風の動画は背筋も凍る恐ろしさで、再生回数は9300万回を超えている。

スレンダーマンからは、一切良いものが生まれなかった。それどころか現象に影響された少女たちが殺人未遂事件を起こし、18年の映画『スレンダーマン 奴を見たら、終わり』は興行的に惨敗し、評論家からも酷評された。

それでもA24はバックルームズの映画化に踏み切った。

9分の動画の成功に刺激されたパーソンズはバックルームズの動画を作り続け、その全てが数百万回単位の再生回数を稼いだ。A24はこの人気に目を付け、17歳のパーソンズに長編映画を託した。

彼が19歳で制作した『バックルームズ』は5月29日に全米公開され、興行収入8100万㌦で初週末1位を記録。さらに40カ国以上でも1位を獲得し、パーソンズは全米および世界で興収1位を達成した史上最年少の監督となった。

主演に迎えたキウェテル・イジョフォーとレナーテ・レインスベは、アカデミー賞ノミネート歴を持つ実力派だ。

舞台は1990年代。家具店の店主クラーク(イジョフォー)は妻に捨てられて酒に溺れ、セラピストのメアリー(レインスベ)からカウンセリングを受けている。

ある晩彼は、店の地下の壁に不思議な裂け目があることに気付く。壁を通り抜けると、そこには異世界──バックルームズ──が広がっている。

バックルームズの恐怖は、二重の「迷子」の感覚にある