(見出しの体裁を整えて再送します。)
Helen Reid Simon Jessop
[ロンドン 25日 ロイター] - 中国発のネット通販大手SHEIN(シーイン)が、ついに株式市場に上場する。9月に香港証券取引所に上場する予定だ。しかし、シーインを取り巻く世界は、同社が新規株式公開(IPO)への道のりを歩み始めた5年前と比べてはるかに厳しくなっている。
シーインはこれまで、複数の国で規制当局による調査や罰金処分の対象となり、株式上場計画が難航したことから「ESG(環境・社会・ガバナンス)」を巡る問題への対応に力を入れてきた。だが、それらの課題の多くは依然として解決されておらず、上場後も同社の企業価値評価を押し下げる要因となりかねない。
シーインがニューヨークとロンドンでの上場を目指した際には、環境への影響や労働基準、企業統治を巡って政治家や投資家から批判が相次いだ。現在も規制当局による調査が続いており、香港での上場に影を落としている。
<強まるファストファッションへの監視>
シーインは現在、欧州連合(EU)欧州委員会と米連邦取引委員会(FTC)から調査を受けている。これまでに、虚偽の値引きの疑いがあるとしてフランスで制裁金を科されたほか、環境配慮を装う「グリーンウォッシング」を理由にイタリアでも制裁を受けた。規制当局はファストファッション業界全体に対する監視を強めている。
シーインはこうした動きに対応し、持続可能性に向けた取り組みに関する情報開示を充実させるとともに、コンサルタントを起用。2024年には外部のESG諮問委員会も設置した。昨年のESG年次報告書は118ページとなり、21年の28ページから大幅に増えた。
しかしながら、企業イメージ改善に向けた一連の取り組みにもかかわらず、欧州とアジアの複数の投資家はシーインの労働環境、ガバナンス構造、規制当局による監視、二酸化炭素(CO2)排出量削減に向けた取り組みなどに依然として懸念を抱いていると表明した。
独ユニオン・インベストメントのESGアナリスト、ヤニナ・バルトケビッツ氏は、「シーインは依然として深刻なESG上の問題を抱えている。特にサプライチェーン(供給網)での労働条件や労働者の権利、サプライチェーン(供給網)の追跡可能性、環境への影響、そして大量生産を前提とした『ウルトラファストファッション』のビジネスモデルが持続可能性に及ぼす影響が問題だ」と指摘した。
シーインの広報担当者は「当社は、高水準の企業統治、透明性、説明責任を維持することに取り組んでいる。事業の運営にあたっては、適用される法律や規制、上場要件を順守しており、事業の進展に合わせてガバナンス慣行を継続的に見直し、強化している」とコメントした。
シーインの25年版サステナビリティー(持続可能性)報告書によると、サプライチェーンの管理には改善が示された。監査で最高評価を受けたサプライヤー数の割合は53%と、24年の47%から上昇した。
ただ、欧州と米国で進行中の調査は多額の制裁金につながるリスクをはらむ。欧州委員会は最近、違法商品の取り扱いを理由に、中国アリババ傘下のアリエクスプレスに5億5000万ユーロ(約1022億円)の制裁金、PDDホールディングス傘下のTemu(テム)に2億ユーロの制裁金をそれぞれ科した。
バルトケビッツ氏は、金銭的な影響にとどまらず、これほど厳しい規制上の監視を受けていること自体が法令順守や内部統制、取締役会による監督体制に疑問を投げかけていると述べた。
<独立した監督体制に疑問符>
一部の投資家は、世界の大企業の創業者が行使する影響力への懸念が高まる中、シーインの企業統治上の問題もリスクとして指摘している。
シーインは複数種類の株式を発行するデュアルクラス株式制度を採用しており、A株には1株当たり10票、B株には1票の議決権が付与されている。24日に提出された上場関連書類によると、IPO後に同社の共同創業者4人は全株式の59.6%を保有する一方、議決権の90%を握る。
このため、共同創業者らは株主の意思決定に対して大きな影響力を持つことになる。ノルウェーの年金基金KLPで責任投資部門を率いるキラン・アジズ氏は、この支配権に期限が設定されていない点も問題だと指摘する。
シーインでは最高経営責任者(CEO)と会長の職務も兼任されている。4人の共同創業者全員が経営陣としての役職を持ちながら取締役会にも名を連ね、取締役7人のうち独立取締役は3人にすぎない。
アジズ氏は「議決権が一部に集中していることと合わせると、独立した監督機能が弱まり、経営陣および支配株主と、少数株主との間で利害のずれが生じるリスクが高まる」と危惧を示した。
<排出量はインディテックスの約2倍>
シーインは、新商品の生産を小ロットで試験的に開始し、需要を確認してから生産を拡大するビジネスモデルを採用している。このため売れ残り在庫を極力抑えられ、競合するファストファッション企業に比べて廃棄物の少ない事業モデルだとアピールしている。
しかし批判的な見方をする人々は、極めて低い価格設定と積極的なマーケティングが、消費者に頻繁かつ衝動的な購買を促していると指摘する。こうした消費行動は、持続可能性の目標とは本質的に相いれないという。
シーインの上場関連書類によると、同社の膨大かつ絶えず更新されるウェブサイトでは、毎日4700種類の新しいデザインが追加され、衣料品全体では取扱商品が200万種類を超える。
米タフツ大フレッチャー・スクールで持続可能性を実務面から研究するケン・パッカー教授は、「シーインは主にプラスチック由来の素材で衣料品を作り、H&MやZARAのほぼ半額で販売している。『余剰在庫がない』としても、これほど低価格であれば、同社の商品はより使い捨てにされやすい」との見方を示した。
売上高に対するCO2排出の規模でも、シーインはZARAを展開するインディテックスに見劣りする。シーインが25年に報告した温室効果ガス排出量はインディテックスの約2倍だった。一方、シーインの年間売上高は418億ドル(約6兆6611億円)で、インディテックスの399億ユーロを下回っていた。
IPOへの投資を予定していないため匿名を条件に取材に応じた、ESG重視のアジアの投資家は、投資家にとって最大の問題はシーインの成長戦略が信頼性のある長期的な持続可能性への移行と両立できるかどうかだと指摘した。ファストファッションは、大量生産、短い商品サイクル、多大な資源消費や廃棄を伴うビジネスであるためだ。