[キーウ 19日 ロイター] - ウクライナのゼレンスキー大統領に更迭されたフェドロフ前国防相が戦時下での選挙実施を求めているが、実現には多くの課題が立ちはだかっている。主な懸案は以下の通り。

◎安全をどう確保するか

ゼレンスキー氏は、米国や欧州の同盟国が選挙の安全を確保できるのであれば、選挙実施を検討する用意があると述べている。トランプ米大統領は以前から選挙の実施を求めてきた。

ウクライナではロシアによる全面侵攻が始まった2022年2月以来、戒厳令が敷かれ、戒厳令下では安全保障上の理由から選挙の実施が禁止されている。

現在も東部、南部、北部にわたる総延長約1200キロメートルの前線で戦闘が継続中。さらにロシア軍は前線から離れた都市や町にも数百機規模のドローン(無人機)やミサイルによる攻撃を繰り返しているほか、発電施設やエネルギーインフラへの攻撃によって停電も頻発している。

世論調査では、戦時中の選挙実施に反対するウクライナ国民が一貫して多数派だ。政治アナリストのボロディミル・フェセンコ氏は、選挙を検討するためには少なくとも空からの攻撃停止が不可欠な第一歩だと指摘する。選挙の日程や規則、手続きなどを定める新たな法律を含め、法的枠組みを一から整備する必要もあると説明し、その作業には約6カ月を要すると見積もっている。

複数の専門家は、ロシアによる選挙介入や情報操作の試みを未然に防ぐ対策も欠かせないと強調する。

ロシアはゼレンスキー氏の任期が24年5月に満了したことを理由に、同氏は正統性を欠き、ウクライナを代表して和平合意に署名する権限がないと主張。トランプ氏も昨年12月、米ニュースサイト、ポリティコのインタビューで、選挙を実施していない状況を批判するとともに「投票を行うべき時だ」と語った。

◎有権者の把握

選挙実施に当たっては、数百万人規模の有権者が投票所へアクセスすることが難しいという問題もある。誰がどこで投票できるのかを把握するため、有権者登録簿の更新も大きな課題となる。

統計に基づくと、6月末時点で欧州連合(EU)域内では一時保護資格を取得しているウクライナ人は440万人を超えており、ウクライナ政府は欧州各地に数百カ所の投票所を設置する必要がある。国連の国際移住機関(IOM)によれば、国内避難民は400万人近く。複数の専門家は、避難民全員の登録作業は容易ではなく、防衛に充てるべき時間や資金を圧迫する恐れがあるとしている。

さらに約100万人が国防軍に所属し、ドローンが飛び交う前線で自由かつ公正な投票を実施することは極めて危険なことから、法改正が必要になる可能性もある。

ウクライナ政府によると、24年時点で450万人の成人ウクライナ人がロシア占領地域に残されている。ロシアは現在ウクライナ領土の約19%を支配し、来月にはこれら地域で独自の選挙実施を計画。しかしウクライナ政府は、それらの選挙を違法だと非難している。

◎ゼレンスキー氏再選の可能性

各種世論調査によれば、ゼレンスキー氏は依然として再選の可能性が十分にある。支持率は開戦直後には約90%に達していたが、その後は調査によって異なるものの、おおむね60%前後まで低下。政治アナリストや調査会社の分析では、昨年発覚したエネルギー分野の大規模汚職事件によって支持率は打撃を受けた。しかしその後は回復傾向にあり、従来の政治家の中では依然として次期大統領候補の一番手とされている。

有力な対抗馬として挙げられているのが、駐英大使を務めるワレリー・ザルジニー元軍総司令官と、大統領府長官や軍情報機関トップを歴任したキリロ・ブダノフ氏だ。

一方でテクノロジー志向の改革派として知られる35歳のフェドロフ氏も、先月の国防相更迭以降、支持を伸ばしている。ゼレンスキー氏が国防相就任からわずか6カ月でフェドロフ氏を解任したことは、戦時下では異例となる街頭抗議活動を引き起こした。

ウクライナメディア「NV」は、有力調査機関「SOCIS」の予測として、フェドロフ氏の得票率が約13%、ザルジニー氏が21%、ゼレンスキー氏が22%になる可能性を報じた。

世論調査では決選投票にフェドロフ氏またはザルジニー氏が進出した場合、いずれもゼレンスキー氏を破る可能性があるとの結果が示されている。

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