Michael S. Derby

[ニューヨーク 4日 ロイター] - ベセント米財務長官が米連邦準備理事会(FRB)に対し、外国の政府・中央銀行が保有する米国債を担保としてドル資金を調達することが可能になる制度「外国・国際通貨当局(FIMA)向け‌レポ・ファシリティ」の上限引き上げを求めたことは、日本が円相場を支える手段を強化する一助となる可能性がある。一方で、市場が米国と日本の決意を試そうとする可能性があるなど、他のリスクを招く恐れもある。

第一に、FRBがFIMA向け‌レポ・ファシリティの上限を拡大あるいは撤廃するかどうかは不透明だ。12人で構成される連邦公開市場委員会(FOMC)の過半数の賛同が必要となる。外国当局が米国債を担保として最大600億ドルの短期資金を調達できる制度だが、本来はこのような特定の用途を想定して設計されたわけではない。

FRBは、ベセント氏の要請にどのように対応するのかについてのコメントを差し控えた。

ベセント氏は2日の交流サイト(SNS)「X」への投稿で、日米両国の財務省が共同で円買い介入という異例の措置を講じたことを表明。併せて「FIMA向け‌レポ・ファシリティは重要なセーフティーネットだ」とし、「今後数カ月以内に、その規模を拡大することを推奨したい」と書き込んで上限の引き上げを求めた。この円買い介入は、この数週間に円が対ドルで約40年ぶりの安値をつけたことを受けて実施された。

ベセント氏は4日のCNBCテレビのインタビューで、約6年前の開始当初は「当時の債券市場の規模ははるかに小さかったため、FRBがこの制度の規模拡大を検討するのは妥当だと思う」と語った。

さらに「日本政府がこの制度を利用し、資金を引き出したがっていることをうれしく思う。これは完全に安全な融資制度だ。日本とは既にスワップラインを締結しているため、実質的にスワップラインと何ら変わらない。つまり、国が担保を差し入れ、わが国が介入のための資金を貸し出すという仕組みだ」とした上で、「これは非常に堅固な制度であり、まさに今回のような事態に備えて設けられたものだと考えている」と訴えた。

上限を引き上げた場合、外国の中で米国債の保有規模が最も多い日本は約1兆1400億ドルの米国債を売却することなく、円買いの資金を調達できる可能性がある。このアプローチは、インフレ懸念、金融政策の方向性、および国債発行の増加による長期国債利回りの上昇に直面している米政府にとってメリットとなるだろう。30年物国債の利回りは2007年以来、約19年ぶりの高水準まで上昇している。住宅ローン金利などに影響を与える10年物国債の利回りも、第2次トランプ政権発足後の最高水準に近づいている。

ニューヨーク地区連銀や米財務省に勤務経験を持つPGIMのチーフ・グローバル・エコノミスト、ダリープ・シン氏は今月3日の顧客向けのレポートで、上限拡大は国債市場にとって「前向きなシグナルとなるだろう」と言及。しかしながら、いかなる調整も「ショックの緩衝材に過ぎず、ファンダメンタルズに起因する為替動向の根本的な解決策にはならない」とくぎを刺した。

FIMA向け‌レポ・ファシリティは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)発生時の2020年に設けられ、21年に恒久化された。市場が混乱して米経済に影響が波及する恐れがある時期に、世界でのドル資金の調達に対処することを目的とした。FRBのウェブサイトでは、この制度について「より広義での金融市場の円滑な機能」を支えるものだと説明している。

ただ、米地方銀行のシリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻を巡って市場が混乱した23年3月から4月にかけて一時的に利用が急増した時期を除けば、利用は極めて限定的だった。

一部の市場観測筋は、ベセント氏が上限引き上げを要求したことは、為替介入への決意を示そうとしたのに過ぎない可能性があると指摘する。為替介入は持続的な効果を示すことが難しい一方で、他のルートを通じて十分なドルを保有している日本の実質的な助けにはほとんどならないからだ。

エコノミストで、マネタリー・ポリシー・アナリティクス共同創設者のデレク・タン氏は「これは、パズルの欠けていたピースだという姿勢を示すためだ」とし、この切り札によって「ベセント氏は米国にはこの取引を裏付けるための、実質的に無限の戦力があるのだから、私たちに挑むなと公言している」との見解を示した。

一方、エバーコアISIのアナリストらはレポートで、市場に逆風が吹く可能性について警告。レポートで「FIMAを活用する計画は為替介入の余地が広がることを示唆しているものの、FRBのレポ・ファシリティの上限に焦点を当てることで、円相場を押し上げるために米国債の大量売却が必要となる局面で市場が日米両国の決意を試そうとする動きを招き、逆効果になるリスクがある」と指摘した。

加えてFIMA向け‌レポ・ファシリティの上限引き上げは、ベセント氏が掲げるもう一つの目標であるFRBの保有資産縮小を複雑化させる可能性もある。FRBのウォーシュ議長がFRB保有資産による市場への影響を減らす方法を模索している中で、FIMAを大規模に活用すれば少なくとも一時的には保有資産が増加するからだ。

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