Libby George
[ロンドン 4日 ロイター] - 世界銀行は4日発表した報告書で、途上国は電力、通信インフラ、技能の格差に迅速に対処すれば、人工知能(AI)の活用によって従来なら1世紀を要した発展を10年間で達成できる可能性があると指摘した。
報告書は、AIによる大規模な雇用喪失も新興国にとって脅威となる度合いは小さいとし、途上国は先進国よりも得るものが多く、恐れるべきものは少ないと分析した。
世銀のチーフエコノミスト、インダーミット・ギル氏は報告書に添えた声明で「AIは途上国に命綱を投げた。それをつかむべきだ」と述べた。
世界各国の企業は、見込まれるAI革命を活用しようと巨額の資金を投じており、各国政府も自国が恩恵を確実に得られるよう対応に追われている。
多くの企業や国にとって課題となるのは、膨大な電力を消費するデータセンターを建設し、それを支える発電能力を確保することだ。
しかしギル氏は、新興国が恩恵を受けるために膨大な資源や独自仕様の大規模言語モデルは必要ないと指摘。「小規模で低コストのAIツールを現地の状況に合わせて活用することで、何百万人もの人々に、より質の高い医療、教育、司法サービス、農業普及サービスを提供できるようになる」と述べた。
医療従事者はAIを診断の迅速化に、教師は授業計画の改善に、農家は何をいつ植えるべきかの判断に活用できる可能性がある。
国際通貨基金(IMF)は、適切な条件が整えば、AIは今後10年間でサハラ以南のアフリカ経済を約4%押し上げる可能性があるとしている。
世銀の報告書によると、生成AIが雇用を脅かす可能性は先進国では14.2%と、低・中所得国の4.5%に比べて3倍高い。
一方、生産性の大幅な向上による恩恵を受けると予想される雇用の割合はほぼ同水準で、途上国では16.2%、高所得国では18.7%となっている。
報告書は、各国政府が電力とインターネットへのアクセスを改善し、デジタル技能を強化するとともに、スマートフォンやコンピューター機器へのアクセスを拡大する必要があると指摘した。
ただ、AIが「所得格差の拡大、偽情報の一段の巧妙化、政治的抑圧」をもたらす可能性があるとも警告した。
その上で、機会を逃す代償は大きいとしている。
ギル氏は「現在の途上国は第1次産業革命の波に乗り遅れ、その後の2世紀にわたって代償を払い続けてきた。今回は乗り遅れる余裕はない」と述べた。