これまで保険業界では、周期的に発生する「エルニーニョ現象」が、大西洋で保険金支払い負担が膨らむようなハリケーンの発生リスクを低下させる要因と考えられてきた。しかし、沿岸地域での人口増加や不動産価値の上昇が進んだ結果、保険会社はその前提の見直しを余儀なくされている。

エルニーニョは太平洋の一部で海面水温が平年より高くなる現象で、大西洋上空にハリケーンの発達を妨げる大気環境を生み出すため、通常はハリケーンの発生数を抑制するとされる。

米政府の科学者らは、エルニーニョが6月に到来したと発表。これは大西洋ハリケーンシーズンの開始時期と重なる。2026年シーズンについては、命名される規模の熱帯低気圧が8-14個、カテゴリー3以上の大型ハリケーンが1-3個という、平年を下回る活動になると予測されている。

かつてならば、この見通しは損害保険会社にとって朗報だったが、近年は事情が変わってきている。保険仲介企業や自然災害リスク分析会社、アナリストらの話では、ハリケーンの発生数が少なくても巨額損害が発生する可能性が高まっているためだ。

米国の連邦統計に基づくと、1970年以降に沿岸郡の人口は4000万人余り増加した。長年にわたる開発によって、ハリケーンの影響を受ける地域に存在する資産量も大幅に増えている。

さらに過去10年間で住宅価格は70%超、再建コストも60%超上昇。こうした資産価値の上昇と沿岸部への人口集中により、比較的穏やかなシーズンであっても保険金支払い額が膨らむ恐れがある。

そのため保険会社は、単純にハリケーンの発生数を見るのではなく「どこに上陸するか」と「その地域にどれだけの資産が集中しているか」を重視する方向へとリスク評価や保険料設定の考え方を変えつつある。

再保険仲介企業ガイ・カーペンターの北米災害リスク部門アドバイザリー責任者、キンバリー・ロバーツ氏は「たった1つのハリケーンが上陸するだけで、過去に例のない規模の保険損失を引き起こし得る。そしてそれは、エルニーニョの年でも十分に起こり得ることだ」と指摘した。

重要なのは上陸場所