より高度なリスクモデル構築へ
エルニーニョはまた、米国南部の一部地域で平年を上回る降雨をもたらす傾向があり、洪水や土砂災害などのリスクを高めている。このため保険会社は、ハリケーン以外の関連災害についても考慮する必要がある。
スイス再保険で米国損害保険再保険部門の最高経営責任者(CEO)を務めるモニカ・ニンゲン氏は「保険対象となる資産価値は上昇し、沿岸部への集中も進み、サプライチェーンも複雑化している。その結果、単一の災害がもたらす損害規模は10年前と比べても大幅に大きくなり得る」と話す。
さらにエルニーニョは災害リスクを左右する要素の一つに過ぎない。気候変動の影響により、保険業界はハリケーンだけでなく、洪水や山火事など増加するさまざまな自然災害への対応を迫られている。
英再保険ブローカー、ギャラガー・リーのスティーブ・ボーウェン最高科学責任者は「過去のデータだけでは学べることに限界がある」と語り、気候パターンの変化によって、従来のリスクモデルの予測精度が低下する事態があり得るとの見方を示した。
このため保険会社が進めているのは、季節的な気候シグナルと個々の不動産データを組み合わせた、より高度な自然災害モデルの開発だ。こうしたモデルを用いて想定損失の幅をより精緻に見積もろうとしている。
一部のリスク専門家は、再建コストの上昇や損失を吸収するための資本コストの変化など、長期的な構造要因にも目を向けるべきだと指摘する。
業界では、人工知能(AI)の活用も進んでいる。調査会社イーマーケターのアナリスト、マイラ・トーマス氏によると、AIは膨大な気象データや資産データの分析を支援し、リスクモデルの精度向上に貢献できる。ただし、AIにもまだできることは限られると説明している。

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