Howard Schneider

[ワシントン 23日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のウォーシュ議長は、金利見通しについて口を閉ざしておきたいと考えているかもしれない。しかし、原油価格が再度上昇し、米関税による新たな物価上昇ショックの可能性が浮上しているほか、FRB内ではタカ派色が強まっており、ウォーシュ氏のこうした姿勢は28―29日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)で試練にさらされそうだ。

7月のFOMCは政策金利を昨年12月以降維持している3.50─3.75%のレンジに据え置くと予想されている。しかしFRBが目標とする2%のインフレ率が5年以上にわたって達成できず、実質所得も目減りする中、FRB当局者の間では、単にインフレを抑えると発言するだけでは不十分だとの懸念が強まっている。ウォーシュ氏はインフレを「一切容認しない」と発言しているが、FRB内部では実際に行動で示す必要があるとの認識が広まりつつある。

ウォーシュ氏は先週の議会証言で、インフレ率は高すぎるとの見方を改めて示しつつ、「政策手段」を検討し、政策を調整する必要があるかどうかを判断すると述べるにとどめた。これに対し、多くの同僚はより踏み込んだ発言をしている。

ウォラーFRB理事は今月に入って「厳しい視線でインフレをにらみ続け、それが自然に消えていくのを待つことは選択肢にはない」と述べた。ウォーシュ氏が金利に関するフォワードガイダンスに否定的な立場を取るだけでなく、経済情勢や、さまざまな展開に対してどのような政策対応を取る可能性があるかについての発言すら控えていることを念頭に置いた発言とみられる。

ウォラー氏は、インフレ期待が足元で落ち着いているように見えるとしても、「われわれが無頓着になり」、インフレが加速し始めるまで利上げを先送りしてよいという意味ではないと述べた。

新型コロナウイルス禍に伴う物価高騰局面では、個人消費支出(PCE)価格指数で測ったインフレ率が2022年6月に7%を超え、FRBは歴史的なペースで利上げを進めた。ウォーシュ氏は、利上げ開始が遅れたのは誤りだったと批判し、同じ過ちを繰り返さないと約束している。その後、物価上昇率は鈍り、24年を通じてFRBの目標に近づいていった。

一部のFRB当局者は、関税とエネルギー価格による影響がともに弱まっているとみていた。この点は、利上げを急がなくてもよいという主張の理由になり、ウォーシュ氏にとっては現時点でフォワードガイダンスを示すのは不適切だと主張する根拠にもなっていた。

しかし、FRBがインフレを容認しない以上、インフレは根付かないという循環論法で政策見通しに関する質問をかわすウォーシュ氏の手法も、利上げ支持のメンバーが増え続ければ限界に達する可能性がある。

FRBがインフレ目標の目安にしているPCE価格指数は5月に前年同月比4%上昇した。目標値2%の2倍で、ここ数カ月は顕著に上昇している。

中東情勢の緊迫化を受けた最近の原油価格上昇と、トランプ氏による追加関税の警告は、今のところインフレのリスクを高めるにとどまっているが、いずれも物価上昇圧力を和らげると期待されていた流れを逆転させるものだ。そのため、物価安定の回復にFRBが本気で取り組んでいるとの国民の信頼が失われるとの懸念も強まりそうだ。

ウォラー氏以外のFRB理事も、インフレ率が早期に低下しなければ利上げを支持する意向を示している。さらに、利上げが必要になる可能性があると考える地区連銀総裁からは、より厳しい発言が出ている。

会合を前にした最後の公の発言で、クリーブランド地区連銀のハマック総裁は、管轄地域の企業経営者から実際に利上げを求める声が上がっていると明かした。企業が利上げを望むのは異例だ。

ハマック氏はリンクトインへの投稿で「私が在任して以降初めて、企業からはインフレを抑えるために行動を起こす必要があるとの声を聞いている。同時に、生活をやりくりできない消費者からは、絶望感が広がっているとの声も聞いている」と記した。

6月に公表されたFRBの四半期調査では、企業の財務責任者が懸念している問題のトップにインフレが挙がった。前回の調査では貿易や労働力の質などより低い6位だった。

7月に公表されたFRBのベージュブック(地区連銀経済報告)でも、物価上昇が今後顕在化する兆候が示された。セントルイス地区連銀は「メンフィス地域のある企業によると、業者がサービス契約にインフレ連動型の価格調整条項を盛り込むケースが増えている。こうした慣行は以前には珍しかった」と報告した。

JPモルガンとゴールドマン・サックスによる最近の分析も、インフレがもはやエネルギー価格や関税だけの問題ではなく、より広範囲に及んでいるようだとのウォラー氏らの懸念を裏付けている。

ゴールドマン・サックスのエコノミスト、ジェシカ・リンデルズ氏によると、6月時点でPCE価格指数の約60%の品目が、年率3%超で上昇していた。これは、新型コロナ禍期の約80%には届かないが、1990―2019年の平均37%を大きく上回っている。

FRBは2012年に2%のインフレ目標を正式に採用した。新型コロナ禍が始まるまでの約10年間、インフレ率は一貫して目標を下回っていた。2021年2月には、PCE価格指数は、FRBが目標を達成し続けていた場合に想定される水準を5%超下回っていた。しかし、その後の物価上昇でこの差は完全に埋まり、現在の指数は、FRBが一貫して目標を達成していた場合の水準を約5.5%上回っている。

それでも、利上げを回避できる可能性は残っており、ゴールドマン・サックスのリンデルズ氏をはじめとするエコノミストは、物価上昇圧力の広がりは年末までに縮小すると予想している。

そのため、今後数カ月間に発表されるインフレ指標が一段と重要になり、ウォーシュ氏の「フォワードガイダンスを示さない」姿勢が、今後発表される経済指標と、それに対する同僚の反応によって試されることになる。

TSロンバードのグローバル・マクロ担当マネージングディレクター、ダリオ・パーキンス氏は、「インフレに対するフラストレーションが高まっている。6年にわたって目標を上回り続けたことで、人々は『信認』について難しい質問を口にし始めている。FRBが責任を回避できる余地はなくなった。これ以上の目標未達は一切容認されない」と述べた。

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