Andrew MacAskill Elizabeth Piper

[ロンドン 20日 ロイター] - 2015年に英労働党の党首選で2度目の敗北を喫し、アンディ・バーナム氏(56)はキャリア最大級の挫折を味わった。「かつての仲間たちに否定される」苦痛を口にした彼はロンドンの政治劇から逃れ、イングランド北西部マンチェスターへと旅立った。

それから10年余り。マンチェスター前市長としての活躍から「北の王」と称されたバーナム氏は労働党党首の座に就き、この短期間で7人目の英国首相となった。

敗北と自らの意思による国政からの「撤退」で、一時は首相への道を絶たれたかに見えたものの、結果的には、無投票で英国で最も権力のある地位へと上り詰めた。

7月20日、ロンドン中心部ダウニング街にある官邸前で行った首相としての初演説で、バーナム氏は新たな経済モデルとより積極的な政府の介入を約束し、長年続いた政治的混乱に終止符を打つと約束した。

「われわれは力不足だった。向上せねばならない」と同氏は語った。「英国は再び安定を取り戻せることを、世界に示さねばならない」

<希望・カリスマ性・そして不透明な部分>

気さくな人柄と持ち前の楽観主義で知られるバーナム新首相のスタイルは、前任のキア・スターマー氏の抑制的で堅苦しいものとは対照的だ。

マンチェスター市長を務めた9年間で、バーナム氏は優れた発信力を備え、イングランド北西部の自身の地域にとってより良い条件を求めて中央政府に立ち向かう覚悟を持った政治家としての評判を築いてきた。

バーナム氏が党内に訴えているのは、自身が持つ豊富な経験と明確なビジョンだ。これで有権者の心をつかみ、世論調査で数カ月トップを走るポピュリストの反移民政党「リフォームUK」を打ち破れると主張している。

ある労働党議員は、バーナム氏の勝利によって同僚議員らの空気は一変したと指摘。29年の次回総選挙までに、リフォームUKに立ち向かい勝利できるリーダーをついに見つけた――多くの党議員がそう確信したという。

「党を覆っていた暗雲が晴れたように感じる」。この議員は匿名を条件にそう語った。「再び希望の兆しが見えてきた」

だが、バーナム氏を巡る熱狂の裏で、党内の一部からは、新政権が実際にどのようなものになるのかについて不安の声が上がっている。

バーナム首相は政権の主要テーマとして、権限を中央政府から地方の指導者へ移譲することを繰り返し表明しており、これは近年の英国史における「最大の権力再均衡」だと述べている。

この野心的な構想の背景には、「ビジネス主導型社会主義」への強い信念がある。エネルギーや運輸といった生活に不可欠なサービスに対する国家による管理を強化しつつ、政府と企業が密接に連携する社会を目指す考え方だ。

このアプローチに対して投資家らは、バーナム氏が国家介入と市場原理のどちらをどれだけ優先するのか見極めかねている。

側近らによると、閣僚人事の全容は上級閣僚にすら事前に知らされておらず、政権の優先事項を把握する上で困難が生じていたという。

マンチェスターでの活動を知る関係者は、これこそがバーナム氏の好むやり方なのだと口をそろえる。すなわち、人々に耳を傾け、アイデアを検証するというスタイルだ。

「報告書を書くくらいなら、彼は1日中外に出て人々と話をしているような人物だ」。マンチェスター市長顧問であり、労働者協同組合などの支援団体「コーペラティブスUK」の代表を務めるローズ・マーリー氏はこう語る。

<ブレア・ブラウン元首相のもとで頭角>

バーナム氏はイングランド北西部リバプールで生まれ、父は電話工事技師、母は受付係として働いていた。ケンブリッジ大学で英文学を修めた後、研究員を経て議会のアドバイザーとなるという、政治家として標準的な道を歩んだ。

同氏はブレア政権で副大臣を務めた後、ブレア氏の後任であるブラウン首相のもとで文化相、保健相を歴任した。10年に労働党党首選へ初めて出馬したが落選し、5年後の2度目の挑戦でも敗れた。

党内の批判派からは、彼のキャリアは優先順位がぶれ続けてきたとの指摘も上がる。

ここ1年、バーナム氏は財政保守主義を掲げる政府に対し「債券市場の言いなりになっている」と批判してきた。重要産業の国有化や、英国の欧州連合(EU)への再加盟を訴えたこともある。

だが、ここ数週間で同氏は発言内容を修正。債券市場に関する発言は誤解されたものだと述べ、国の財政状況は大規模な国有化を行うには厳しすぎるとしたほか、英国は当面EUへ再加盟することはないと述べた。

前回22年のサッカーワールドカップ(W杯)後、当時野党党首だったスターマー氏は、長年のライバルと目されていたバーナム氏の「勝ち馬に乗る癖」を皮肉ったことがある。

「バーナム氏は、子供の頃から応援していたアルゼンチンの優勝を見届けられたようだ」と、スターマー氏は演説で語った。「ただ、同じく『昔からの大ファン』だったフランスが決勝で敗れ、『幼少期からファンだった』モロッコとクロアチアも準決勝で敗退したのだから、本人にとっては複雑な大会だったろうが」

だがスターマー氏自身もまた、在任中に政策が反発を受けるたびに方針転換を繰り返したことで、自らの求心力を削ぐことになってしまった。

こうした二の舞を避け、次期総選挙までに支持を回復させるには、バーナム氏が力強いリーダーシップを示せるかが鍵になると複数の議員は指摘する。

さもなければ、ある労働党議員が語るように、「2年後にはバーナム氏も政権の座を追われることになりかねない」という。

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